研究実績の概要 |
微生物の最小サイズは一般に0.2~0.3マイクロメートルとされ、自然科学の諸分野において孔径0.2マイクロメートルのフィルターを用いた濾過除菌が広く行われる。しかし、研究代表者らの先行研究により、系統的に新規な細菌がこのフィルターを通過することが明らかとなってきた。本研究では、これら濾過性細菌の持つ生物機能を多面的に調べる。平成29年度は、研究代表者の異動等によって遅れていた「研究② 濾過性細菌の遺伝子機能ポテンシャルの解明」の課題を遂行した。結果として、サハラ砂漠産の濾過性細菌Oligoflexus tunisiensis Shr3Tと近縁細菌との比較ゲノム解析など高次解析が完了した。ゲノムレベルでの比較により、いくつかの既知系統がOligoflexus を含むOligoflexia グループに帰属することがわかった。この成果の一部は、国際共同研究として論文が公表された(Hahn et al., International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 2017)。また加えて、当初の計画に沿って「研究③ 濾過性細菌群集の持つ生態学的機能の解明」の課題も遂行した。具体的には、国内で採取した環境水サンプルを孔径約0.2マイクロメートルのフィルターで濾過し、その濾液から濾過性細菌群由来の混合ゲノムDNAを抽出した。この抽出DNA をメタゲノム解析に供した後、ゲノム解析用ソフトウェアおよび各種ツールを用いて、複数の細菌ゲノムを再構築した。現在、その遺伝子機能の推定を進めているところである。
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