食物は栄養成分に加え、味や匂いなどの感覚成分を有する。味覚はこれらの成分の価値の判断基準として機能する。糖や脂質は好ましい味を呈し多く摂取されるのに対し、腐敗物や毒物はしばしば酸味や苦味を呈し忌避される。一方、この基準は一定でなく、例えば、満腹や空腹の場合、味の感じ方や食嗜好性が変化する。しかし、その原因は不明である。 そこで、本研究ではマウスを用い、視床下部摂食中枢神経の活動をコントロールし、いわば人為的に空腹状態を再現することで、味覚感受性の制御機構を解析した。その結果、空腹に伴い甘味感受性が高まるのに対し、苦味感受性が低下した。視床下部が空腹に伴う味覚の調節を担うことが明らかになった。
|