研究課題
東南アジア、特にインドネシアに広がる熱帯泥炭地では、植物遺体からなる泥炭が蓄積してきたが、人口増加に伴う乱伐、野焼きからの火災により近年急激に環境改変が進んでいる。中でも、湿地林の排水による水分状態の変化に伴う泥炭分解などを理由に放出される温室効果ガス動態の把握が不可欠になっていた。本研究課題では、生物地球化学的・水文学的な研究手法を併用した現地調査を行い、人為的な環境変化が泥炭地の物質循環機構に与える影響を明らかにした。現地では、主に排水→伐採→火災→荒廃放棄地という変化が急速に起こっている。本課題では、これらのうち、未排水の天然林・排水林・火災後の荒廃泥炭地を対象に、地下水位と温室効果ガス観測・地下水質の調査などを行った。その結果、天然林から排水林に変化する過程で、泥炭分解による二酸化炭素放出が増加し、さらに火災により荒廃地化すると、放出量は天然林の状態に比べて小さくなることが示された。これは、排水により大気から泥炭への酸素供給が増加することでの分解の増加、また火災による易分解性の炭素の焼失・水を介しての流出などにより、焼け跡では二酸化炭素放出が少なくなったと考えられた(Itoh et al., 2018; Science of the Total Environment)。また本課題は、インドネシア熱帯泥炭湿地で初めての気象観測タワーでの生態系スケールのメタンフラックス連続観測を開始し、その季節変動を明らかにした。乾季にはメタンの吸収源として機能するものの、雨季の湛水時期には放出源に転じること、その放出速度は温帯湿地などに比べて非常に小さいものであることが明らかになった(Sakabe et al., 2018; Global Change Biology)。その他に、火災に伴う泥炭地下水中の溶存有機炭素の質と量の変化についても詳細に観測した。
平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 10件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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