研究課題
樹冠は雨水を林内雨(樹冠通過雨+樹幹流)と遮断蒸発に再分配する場であり、その分配が地域や地球規模の水循環に影響を与える。本研究は、樹冠の雨水再分配プロセスを「枝葉への雨水の付着と蒸発」「枝葉間での雨水移動」という物理現象の組み合わせとして捉え直し、実験・観測・演算を通して、樹木の濡れ乾き過程を物理的に再現することが目的である。昨年度に行った林内雨再現実験で得られた1分ごとの雨滴データの解析により、樹木の濡れ具合による樹冠通過雨の生成経路の変化を明らかにした。降雨継続にともない、針葉樹では滴下成分の割合が増えていく一方、葉のない広葉樹では滴下成分の割合が減少し、葉のある広葉樹はその2つの特徴を併せ持っていた。これは滴下雨滴の生成過程の葉と枝での違いが反映されており、葉では濡れが進行するほど葉先から多くの滴下雨滴を発生させたが、枝では濡れが進行すると枝表面の粗度が減少し、滴下せずに枝表面を下方に向かって流れていく成分が増えて滴下雨滴が減少した。この成果は、報告者が過去に得てきた他樹種の野外観測雨滴データの再解析からも確認された。樹幹流の大小を決める要因が葉の有無により変動することを明らかにした。葉の有無にかかわらず樹木サイズや樹木全体のバイオマス量が影響を与えるが、葉があるときは幹枝バイオマスに対する葉バイオマスの割合が重要であり、葉が無いときは枝の角度や数が重要であった。以上により、針葉樹・広葉樹及び落葉前後の樹木の濡れ過程と濡れによる林内雨の生成過程の変化を把握し、葉と枝の表面の濡れやすさの違いとその枝葉の配置が樹冠内の雨水の付着と移動を決定づけることを解明した。また本課題に関連して林内雨滴研究の総説を発表し、林内雨滴研究そのものの重要性と降雨再分配プロセスの理解における林内雨滴研究有効性を説いた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
Levia, D.F. and Nanko, K. Quenching the world’s thirst: revelations of 176 million throughfall drops. Joint workshop on data science (University of Delaware, USA), 2017年11月16日
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http://www.ffpri.affrc.go.jp/research/saizensen/2017/20170629-03.html