研究課題/領域番号 |
15H05633
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中尾 亮 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 特任助教 (50633955)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 節足動物 / 共生微生物 / 細菌叢 / マダニ / ベクター / 原虫 / リケッチア / クラミジア |
研究実績の概要 |
節足動物は病原体以外にも様々な微生物を体内に保有し、節足動物―病原体―共生微生物の3者間で複雑な共生関係を構築している。この「三つ巴」の関係の理解には、「どのような種類の共生微生物」が「どのような機能を持つのか」を知ることが不可欠である。本研究では、病原体媒介節足動物の共生微生物のゲノム情報を体系的に整理し、節足動物と病原体の宿主寄生体関係に関わる共生微生物の探索を行う。今年度は、国内および海外(ザンビア、ミャンマー、フィジー)で約2,000個体のマダニを採集した。主な内部共生菌としてRickettsia属細菌の細菌を対象に、リアルタイムPCRによる検出を試みた。その結果、約20%のマダニでリケッチア属細菌を検出した。リケッチア陽性検体に対し、節足動物及び哺乳動物の培養細胞にマダニ乳剤を接種して分離を試みた。これまで、Rickettsia属細菌11株に加えて、Rickettsiella属細菌1株、Spiroplasma属細菌3株、Chlamydia門細菌2株の分離培養に成功した。さらに、マダニの共生微生物叢の解析を目的に、16SリボソーマルRNA遺伝子の超可変領域を対象としたPCRを実施し、MiSeqを用いたアンプリコン解析を実施した。その結果、Anaplasma属、Ehrlichia属、Coxiella属などがマダニの優占内部寄生細菌種として特定された。また、フタトゲチマダニ実験室維持株(岡山株)についても、各ステージ(卵、幼ダニ、若ダニ、成ダニ)で細菌叢を解析したところ、Coxiella属細菌が優占種として特定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国内外でのマダニの採集が順調に進んだ。培養細胞を用いた共生細菌の分離が軌道に乗り、最初のターゲットであったRickettsia属細菌以外にも、節足動物の生理に影響することが報告されているRickettsiella属細菌やSpiroplasma属細菌も分離に成功した。また、アンプリコン解析の結果を応用することで、次年度以降の効率的な共生微生物の分離が期待出来る。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、節足動物の採集を国内外で継続して行う。また、培養細胞を用いた共生微生物の分離を進める。アンプリコン解析の結果からターゲットとなる共生微生物を選定し、高度感染マダニを抽出して分離試験を行うことで、共生微生物の分離効率を高める。また、細菌群以外の共生微生物としてマダニに感染する共生的ウイルス群および寄生原虫群の検索を開始する。これまで分離に成功した共生細菌に関しては順次、MiSeqおよびPac Bioシーケンサーを利用してドラフトゲノム情報を得る。
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