研究課題
ポリイソプレンを主成分とする天然ゴム並びに合成ゴムは、広範な分野で利用される不可欠な資源であるが、近年の世界的な経済成長に伴う急速なゴム需要の拡大が予想されている。そして、将来的に増大すると考えられるゴム廃棄物は、燃焼や埋め立てにより処理されているのが現状であり、温室効果ガスの発生や環境負荷が懸念されている。本研究課題では、環境負荷低減を狙い、増加し続けるゴム廃棄物の再資源化システムの確立を目指して、ユニークなゴム分解特性を持つゴム分解細菌のゴム分解メカニズムを解明することを目的としている。当該年度では、ゴム分解時に細胞内にポリマー原料となりうるポリヒドロキシアルカン酸の蓄積が観察されたRhizobacter sp. NS21株のゴム分解関連遺伝子を突き止めるため、ゴム存在下における誘導条件またはゴム非存在下での非誘導条件で培養した細胞から遺伝子転写産物を調製し、DNAシークエンサーを用いたRNAシークエンス解析により遺伝子の発現量を網羅的に定量することで、発現量に変化がみられる遺伝子の探索を行った。その結果、ゴム生育時において特異的に発現量が増大する96個の遺伝子を特定した。それらの中には、ゴムの初発分解に関与する2種の細胞外ゴム分解酵素遺伝子やその下流分解に働くと考えられる酵素をコードする遺伝子が含まれており、転写誘導性の観点から、これら遺伝子がNS21株のゴム分解に関与することが強く示唆された。さらに、ゴム初発分解遺伝子の近傍には、転写制御に関わる因子をコードする遺伝子が見出されてており、現在、各誘導性遺伝子の転写制御への関与を調べている。
2: おおむね順調に進展している
研究目的の大局的観点から概ね順調に進展していると考えられる。当該年度では、ユニークなゴム分解特性を持つゴム分解細菌の分解酵素遺伝子を同定するために、ゴム代謝時に特異的に転写誘導される遺伝子を特定できた。本研究で得られた成果は、次年度以降の分解能向上を目指した発現量改変に向けた基礎的知見となりうる。
次年度以降は、特定したゴム分解関連遺伝子の発現調節に関わる因子の同定を行う。さらに、特定した因子とゴム分解遺伝子のプロモーター配列との結合性や、特定した因子をコードする遺伝子欠損株の作製とその表現系を解析することで、当該転写制御因子によるゴム分解関連遺伝子の転写調節機構の解明を目指す。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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