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2015 年度 実績報告書

中枢神経疾患の理解と治療を目指したエリスリナアルカロイド類縁体の網羅的合成研究

研究課題

研究課題/領域番号 15H05641
研究機関名古屋大学

研究代表者

下川 淳  名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (60431889)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード天然物合成化学 / 多様性志向型合成 / ニコチン性アセチルコリン受容体 / エリスリナアルカロイド
研究実績の概要

ニコチン性アセチルコリン受容体に対するアンタゴニストはニコチン依存症やうつ病など中枢神経疾患の創薬ターゲットとして注目を集めている。効果が期待されるサブタイプ選択的なアンタゴニスト、ジヒドロβエリスロイジン(DHβE)を元に、これまで合成困難であった類縁体(エリスリナアルカロイド)を合成することを目的として研究を行っている。独自の多分化能性合成後期中間体から短段階で多様な類縁化合物を迅速に合成し、その構造活性相関を調査することにより、最終的にはサブタイプ機能解析のツール開発及び医薬品リードの創出を行い、構造生物学及び医薬化学の両面に貢献する知見を引き出すことが目的となる。
初年度は網羅的な合成への展開にも耐えられるエリスリナアルカロイドの合成方法論を確立することを目指した。共通の基本骨格と様々に官能基化された周辺構造を持った生合成的には近縁の化合物群から成っており、個々の化合物ごとに周辺部分骨格が少しずつ異なる酸化状態を示している。構造活性相関を見出すという初期目的達成のためにはこれらのエリスリナアルカロイドの合成を効率化し、多くの類縁体を網羅的に合成する必要がある。光学活性体基質において、鈴木宮浦カップリングによるビアリールの構築と縮合反応による9員環ラクタム骨格の構築、さらにはフェノールの一重項酸素酸化を用いた渡環アザマイケル反応によってジアステレオ選択的に目的のAーD環を有する縮環骨格が構築できるという知見を得た。この際、9員環ラクタムが予想外に2つの軸不斉異性体として得られたためにこれを単一のものとして得るための検討に多くの検討を要した。最終的には目的どおりに代表的な化合物であるエリスラリンの及び3種の類縁体を合成し、論文として報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

エリスリナアルカロイドの網羅的合成と類縁体合成を目指した本研究において平成27年度の計画はエリスリナアルカロイドの代表的な化合物であるエリスラリンの不斉合成経路を確立することにあった.実際にキラルなアセトニドを有する基質に対して反応を行った結果,9員環ラクタムを合成する際に軸不斉に由来する2つの異性体を与えるという予想外の結果が得られたが,これを加熱することで単一の異性体へと寄せることができることを見出している.この知見を得るべく当初の研究計画に比べて3ヶ月程度の遅れがあるものの,目的通りの結果を得ることができていると考えている.すなわち,単一の異性体となったラクタムに対して,一重項酸素酸化反応と引き続く環化反応が進行し,縮環骨格を軸不斉の立体化学を転写する形で不斉構築した後に脱水反応,メチルエーテルの構築,ラクタムの還元などの操作によってエリスラリンの初めてとなる不斉合成に成功した.

今後の研究の推進方策

エリスラリンの不斉合成に成功したことから,今後は多様性志向型合成に向けた検討を行う必要があると考えている.そのために,共通合成中間体として設定した縮環構造を有する化合物のスケールアップ合成法を確立することを目指し,個別の反応について検討を行う.すなわち一重項酸素酸化反応については光と気相の酸素ガスを使う反応であることから反応スケールの影響をうけやすいと考えられる.また9員環ラクタムの環化反応は高希釈条件での反応を行っているので,スケールアップに際してはより高濃度での変換も実現できるように検討を行う.またそれぞれの段階での光学純度の低下が起きないよう検討するとともに,少々の光学純度低下を補う再結晶法についても検討する.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Synthesis of the Common Core Structure of the Stemofoline Alkaloids2015

    • 著者名/発表者名
      Eiji Ideue, Jun Shimokawa, and Tohru Fukuyama
    • 雑誌名

      Organic Letters

      巻: 17 ページ: 4964-4967

    • DOI

      10.1021/acs.orglett.5b02373

    • 査読あり
  • [学会発表] Aiming Divergent Syntheses of Polycyclic Natural Products2015

    • 著者名/発表者名
      Jun Shimokawa
    • 学会等名
      Pacifichem 2015
    • 発表場所
      ホノルル
    • 年月日
      2015-12-15 – 2015-12-20
    • 国際学会
  • [学会発表] Synthetic Studies on Erythrina Alkaloids2015

    • 著者名/発表者名
      Jun Shimokawa, Hirotatsu Umihara, Tomomi Yoshino, Masato Kitamura, Tohru Fukuyama
    • 学会等名
      16th Tetrahedron Symposium
    • 発表場所
      ベルリン
    • 年月日
      2015-06-16 – 2015-06-19
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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