研究課題
計画1)骨新生因子(HDOI)がin vivoにて肥満抑制するかを明らかにするためにHDOIのトランスジェニック(Tg)マウスに高脂肪食(HFD)負荷を3ヶ月間施し、一週間ごとの体重変化の記録、各種脂肪組織重量の測定、グルコース耐性試験(GTT)、インスリン耐性試験(ITT)を行った。しかし、Tgマウスと野生型マウスに顕著な差を認めなかった。計画2)HDOIが発現している骨膜細胞から前駆細胞を採取して脂肪細胞へと分化させるin vitro 初代培養系を確立した。未分化間葉系細胞を含む骨膜細胞集団はヘテロであると考えられたため、これらの細胞群からHDOIの標的細胞をフローサイトメトリーによって採取した。In vitroにてHDOIの標的細胞、非標的細胞を脂肪細胞へと分化させると、HDOIの標的細胞は、非標的細胞に比べて、脂肪細胞へと効率的に分化した。さらにHDOI KOマウスから採取したHDOIの標的骨膜細胞は脂肪細胞への分化能力が亢進していた。したがって、HDOIの作用点は未分化間葉系細胞から脂肪細胞への分化決定であると予想された。計画3)運動負荷によるHDOIの発現誘導を検討するために、C57BL/6マウスに急性的運動負荷、もしくはHDOIのLacZノックイン(KI)マウスを用いて自発的に長期的運動負荷を与えた。HDOIの発現が強く認められる脛骨を採取し、qPCRあるいはLacZの活性染色によってHDOIの発現変動を解析した。しかし、運動負荷刺激によるHDOIの顕著な発現増強は認められなかった。一方で、HDOIのLacZ KIマウスを用いて大腿坐骨神経切除により機械刺激負荷を軽減すると、顕著な発現抑制を認めた。したがって、HDOIの発現維持に機械刺激が必要であることが明らかになった。
3: やや遅れている
本研究はマウスを用いた解析であり、個体間のバラツキがある上に、さらに三ヶ月間のHFD負荷を行う必要があるので時間を要している。しかし、in vitroの実験系の確立や運動負荷による解析については順調に進んでいる。
計画1)HDOIのノックアウト(KO)マウスに関しては、前年度に問題となったC57BL6系統への戻し交配を完了し、現在は解析に使用するマウスを準備している段階である。今後、これらのマウスにHFD負荷を与え、解析する予定である。計画2)HDOIは未分化間葉系細胞の細胞運命の決定に関与している可能性がある。未分化間葉系細胞からの脂肪や骨細胞への運命決定機構については幾つかの報告があり、今後はこのシグナル制御機構について骨膜初代培養細胞系を用いて検討していく予定である。計画3)運動負荷によるHDOIの発現誘導は認められなかった。しかしmRNA合成を伴わない分泌量増強も考えられるので、今後はELISAによる検討を行う必要があり、実験系の確立を共同研究により進めている。
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