研究課題
ハダカデバネズミ(Naked mole rat)は、アフリカに生息する低体温(32度)かつ珍しい外温性の哺乳類である。また異例の長寿命(平均28年)、がん化耐性という特徴をもつ。本申請研究では、NMR特異的な個体の発生・成長・老化速度の抑制に寄与すると考えられる、ハダカデバネズミ特異的な細胞の低増殖性・低体温に着目し、メカニズム・関与因子の同定を行うことを目的としている。これまでに申請者らは、細胞の増殖速度、個体の成長速度が、マウスとくらべてハダカデバネズミで非常に遅いことを示してきた。現在細胞の低増殖性のメカニズムについて、細胞周期・温度・代謝の観点から詳細な解析を進めている。また、組織中の細胞分裂の動態についても、マウス・ハダカデバネズミを用いて引き続き解析を行っているところである。一方、ハダカデバネズミは低体温・低代謝にも関わらず非常に行動が活発な動物であるのが特徴である。今回、ハダカデバネズミを解剖したところ、熱産生器官である褐色脂肪組織が豊富に存在することが、肉眼および組織解剖、FDG-PET、またmRNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析を通して明らかとなった。興味深いことに、マウスやヒトにおいて成体の褐色脂肪組織の維持に必須なPRDM16(PR domain containing 16)の発現が認められなかった。解析の結果、ハダカデバネズミは室温30度の環境下でかなり体温変動していることが明らかになっており、外温性・低代謝動物ハダカデバネズミにおける褐色脂肪の役割についても、引き続き解析を進める。
2: おおむね順調に進展している
本年度、細胞の低増殖性のメカニズムについて、細胞周期・温度・代謝の観点から詳細な解析を進め、一定の成果を得ることができた。また、組織中の分裂細胞についても引き続き解析を進めており、興味深い結果を得ている。さらに、褐色脂肪の外温性哺乳類における新たな役割を示唆するデータを得ることが出来た。よって、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
引き続き、細胞の低増殖性のメカニズムについて、細胞周期・温度・代謝の観点から詳細な解析を進める。また、高温感受性(37度で増殖停止する)との関係性も明らかにする。組織中の分裂細胞について、引き続き臓器の種類を増やして解析を進める。また、褐色脂肪については運動能や社会性との関係性を検討する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
ファルマシア
巻: 53 ページ: 225-227
Nature Communications
巻: - ページ: -
10.1038/ncomms11471.
実験医学
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http://www.igm.hokudai.ac.jp/debanezumi/