研究課題/領域番号 |
15H05651
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 淳 京都大学, 高等研究院, 教授 (30511894)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | Xkr8 / スクランブラーゼ / リン脂質 / ホスファチジルセリン / アポトーシス |
研究実績の概要 |
細胞膜を構成するリン脂質は非対称的に存在しており、ホスファチジルセリン(PS)は、細胞膜の内側に存在している。しかしながら細胞がアポトーシスにより死んだ時には、PSはスクランブラーゼの活性化によって細胞表面に露出する。私たちはこれまでに、アポトーシス時にカスパーゼによる切断で活性化するスクランブラーゼ、Xkr8を同定した。そしてその後の解析において、Xkr8はBSG/NPTNといったシャペロンと複合体を形成することで細胞膜に移行することを見出している。また、Xkr8は細胞膜上でカスパーゼによって切断されることでダイマー化し活性化することを見出した。本年度はXkr8の活性化がダイマー化で十分なのか否かを検討した。Xkr8のC末端、もしくはN末端に薬剤の添加によりダイマー化するドメインの融合、ダイマー化する蛍光タンパク質の融合、ダイマー化するタンパク質(BCR等)の融合など、様々な手法によりダイマー化を誘導したが、Xkr8はほとんど活性を示さなかった。このことより、Xkr8の活性化にはダイマーの形成のみでは十分でないことが分かった。また、BSG/NPTNの両方を欠損する細胞に同じファミリーのXkr4を発現させたところ、BSG/NPTNがなくてもXkr4は細胞膜に局在することが分かった。実際、BSG/NPTNがなくても細胞膜に移行したXkr4はカスパーゼの刺激により活性化し、PSを細胞表面に露出する。このことより、Xkrファミリーは、それぞれのメンバーごとに異なるシャペロンと複合体を形成することで細胞膜に局在しリン脂質スクランブル活性を持つと結論付けた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Xkr8の活性化について、ダイマー化のみでは十分でないという知見を得ることができた。また、Xkr8のシャペロンとして同定したBSG/NPTNが他のファミリーメンバーに必要ないことを示唆する結果を得ることができた。これらの結果をもとに来年度、更なる分子機構の解明へと進むことができるためおおむね順調だと結論付けた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、TMEM16F/Xkr8を欠損する細胞にXkr8を発現させ、ホスファチジルコリン(PC)の取りこみを指標としてXkr8のスクランブラーゼ活性が恒常的に上昇している細胞を取得する。また、その細胞よりcDNA libraryを作製することで、Xkr8の活性化に関わる因子を同定する。Xkr4においてはこれまで行ってきた生化学的解析(BN-PAGE、免疫沈降)により、複合体に含まれるタンパク質を同定する。
|