研究課題
本研究の目的は、食事中に含まれる遊離脂肪酸センサーとして外部環境を感知し、生体内のエネルギー代謝調節を担う、脂肪酸受容体の生理機能を多角的かつ詳細に解析し、脂肪酸受容体が制御するエネルギー代謝システムを解明することである。初年度は、白色脂肪細胞やマクロファージなど、それぞれの組織におけるGPR120欠損が全身のエネルギー代謝に与える影響を調べるため、組織特異的にGPR120を欠損したマウスの作製を行った。具体的には、GPR120の欠損に有効と思われる、エクソン1全域を欠失させるために最適と考えられるloxP配列の挿入部位を検索し、相同組換え用ベクターのデザインを行った後、コンストラクトデザインに基づき、ベクターコンストラクションを実施した。このベクターをES細胞にインジェクションし、一次スクリーニングを行った。その結果、12クローンの陽性候補クローンを取得した。このうち2クローンを使用し、アグリゲーション法を用いたキメラマウス作製を実施した。その結果、一度のリトライを経て、80%以上の寄与率の個体を得ることに成功した。今後、キメラマウスとCAG-Flpマウスの交配を実施し、薬剤耐性遺伝子除去マウスを同定するとともに、野生型個体との交配を実施し、Flpトランスジーンを持たない個体を選別する予定である。これと並行し、褐色脂肪細胞におけるGPR120の機能解析を進めており、in vitro実験系において、GPR120が褐色脂肪細胞の機能的成熟に寄与する予備的知見を得ることに成功した。今後は分子メカニズムの更なる解明を目指す予定である。
2: おおむね順調に進展している
組織特異的遺伝子欠損マウス作製について、ほぼ計画通り進行している。 キメラマウス作製過程において一度リトライを行った分の遅れがみられるものの、想定していた範囲であり全体の計画からの大幅な遅れはみられない。in vitro実験系による褐色脂肪組織における脂肪酸受容体の新規機能解析についても順調に推移しており、概ね順調に推移していると言える。
Floxedマウスを得るため更に6ヶ月程度の期間が必要であるのみならず、Floxedマウスの作製が終わったのちも、任意のCREマウスとの掛けあわせが組織特異的マウスの取得に必須であるため、解析対象のマウスを取得するために一定の時間を要する。事前にCREマウスを入手するなど準備を進め円滑に計画を進行させることが求められる。in vitroで進めている褐色脂肪組織については、in vivo実験を組み合わせ、生体内で実際に起きている現象との比較と妥当性の検討を平行して進め、脂肪酸受容体が制御する褐色脂肪細胞の生理機能に関する分子メカニズムを解明する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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http://k-connex.kyoto-u.ac.jp/ja/researcher/atsuhiko-ichimura
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