研究課題
Ca2+シグナルは骨や免疫系を含む多くの生体システムの維持に関わる。本課題ではEF-hand proteinの一つEfpと、その相同遺伝子EfpLGに焦点を当て、『赤血球』『リンパ球』『骨』を制御する新たなCa2+シグナルトランデューサーとしての生体制御機能の解明を目指す。1. Efp遺伝子コンディショナルノックアウト (CKO)マウスの作製: Efp floxedマウスを下記のCre発現マウスと交配させ、各細胞種特異的なEfp CKOマウスを作製した。造血細胞特異的欠損マウス: Vav-iCre; T細胞特異的欠損マウス: Lck-Cre; B細胞特異的欠損マウス: Mb1-Cre; 破骨細胞特異的欠損マウス: Ctsk-Cre2. EfpLGの遺伝子欠損マウスの作製:CRSIPR/Cas9システムによるゲノム編集法を用いて、EfpLGの遺伝子欠損マウスを作製した。ATG周辺のゲノム領域を標的としたguide RNAを作製し、C57BL/6受精卵への移入により、複数のEfpLG変異マウスの作出に成功した。3. Efpによる赤血球分化制御機構の解析: 造血細胞特異的Efp欠損マウスの胎児肝から前赤芽球を単離精製し、EpoやSCF等の赤血球分化誘導因子を用いた分化培養実験を実施した。フローサイトメトリー及び遺伝子発現解析により、Efp欠損により赤芽球分化が障害されることを見出した。4. Efp等の骨免疫因子による骨制御解析: 造血細胞特異的Efp欠損マウスの胎児肝細胞由来キメラマウススの骨組織を解析し、Efp欠損により重度の骨粗鬆症が誘導されることを確認した。またCa2+シグナルが関わるリンパ球の一つγδT細胞に着目し、組織損傷時の炎症誘導と骨再生誘導機構を解析し、Nat. Commun.の成果に繋がった。一方、リンパ球および破骨細胞においてCa2+シグナルを誘導するサイトカインRANKLの免疫制御機能を解析し、Immunity誌の成果に貢献した。Ca2+シグナルを中枢とした新たな骨と免疫間の関係性が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
Efp CKOマウスの作製に時間がかかると想定されたが、大きなトラブルもなく順調に進行している。またEfpLG欠損マウスに関しては、申請者にとってCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集法が初めての経験であったため試行錯誤を要したが、共同研究先の本学生命工学センター 動物資源領域との協力により、複数の遺伝子欠損マウスが得ることができた。Efp CKOマウスの解析も概ね計画通りに進行しており、興味深い成果が得られつつある。
Efp、EfpLGともにこれまで研究対象に取り上げられた例が少なく、解析手法の情報や解析ツールが不足している。特に抗体に関しては市販の抗体クローンをほぼすべて試したが、内在性の発現を検出できる抗体はEfpに対する抗体1クローンのみであつた。そのため遺伝子発現解析を進める上でEfpおよびEfpLGのレポーターマウスの作製やin situ RNA解析系の確立等が必須であり、来年度以降の計画に含めて進めていく予定である。
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Nature Communications
巻: 7 ページ: 10928
10.1038/ncomms10928.
巻: 6 ページ: 6637
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Immunity
巻: 43 ページ: 1174-1185
10.1016/j.immuni.2015.10.017.
http://www.osteoimmunology.com/