研究課題
Ca2+シグナルは骨や免疫系を含む多くの生体システムの維持に関わる。本課題ではEF-hand proteinの一つEfpと、その相同遺伝子EfpLGに焦点を当て、『赤血球』『リンパ球』『骨』を制御する新たなCa2+シグナルトランデューサーとしての生体制御機能の解明を目指す。1.EfpによるT細胞、B細胞分化制御機構の解析: T細胞特異的Efp欠損マウスおよびB細胞特異的Efp欠損マウスを作製し、リンパ球におけるEfpの生理的機能を明らかにした。またCa2+シグナルが関わる胸腺T細胞分化制御因子を見出し、遺伝子欠損マウスの解析を通じて、制御機構の検討を進めた。2.Efpによる骨代謝制御機構の解析: 造血細胞特異的Efp欠損マウスおよび骨髄キメラマウスを用いて、破骨細胞分化におけるEfpの生理機能を検討した。M-CSF/RANKL刺激による破骨細胞分化培養系により、Efp CKOマウス由来の骨髄細胞における分化反応性及び成熟破骨細胞の骨吸収能を評価し、Efpによる破骨細胞分化制御解析を実施した。3.他臓器におけるEfpの発現解析および生理機能の解析: 免疫組織染色に使用可能なEfp抗体が存在しないため、全身組織におけるEfpタンパク質の発現分布を解析することが不可能であった。そこでCRISPR/Cas法によりC末端にFlagタグを融合させたEfp-FLAGノックインマウスを作製し、抗FLAG抗体を用いた免疫染色により全身組織におけるEfpの発現解析を可能にした。その結果、Efpは腸管上皮でも高く発現していることが確かめられた。EfpLGも同様に腸管上皮での発現が高いため、腸管上皮細胞特異的Efp欠損マウス、ならびにEfp、EfpLG2二重欠損マウスの作製を進めた。またEfp-FLAGマウスの解析から、血球系細胞系統の中でも特に骨髄の免疫系前駆細胞や赤芽球系統でEfpが高く発現していることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
各種EfpコンディショナルノックアウトマウスおよびEfpLG欠損マウスの作製も順調に進み、概ね計画通りに解析が進んでいる。またEfp-FLAGノックインマウスの作製にも成功し、免疫組織染色および免疫沈降実験において内在性Efpを検出することが可能となった。当該マウスの使用により、Efpのより詳細な発現解析が可能になった他、Efp結合タンパク質の探索実験にも大きく貢献できると考えられる。さらにCa2+シグナルが関わる胸腺T細胞分化制御因子の発見にも結びついており、新たな研究展開も見せている。
赤芽球分化、骨代謝制御、リンパ球分化におけるEfpの生理機能が明らかになり、最終年度ではその制御機構の解明に挑む。RNA-seqによるEfp制御遺伝子の網羅解析とEfp結合タンパク質の同定を手かがりに、Efpが制御する細胞内シグナルの全体像を解明する。並行して腸管におけるEfp/EfpLGの機能解析も進める。最終的に、Efp欠損に生じる貧血・免疫不全症・骨疾患の発症機序、ならびにEfpLGの生理的機能を分子レベルで明らかにし、Ca2+シグナルトランデューサーとしてのEfp familyによる生体制御機能の解明に繋げる。
第11回(平成28年)日本免疫学会研究奨励賞 (JSI Young Investigator Award) 受賞
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Journal of Bone and Mineral Research
巻: 32 ページ: 434-439
10.1002/jbmr.2990.
Physiological Reviews
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Immunity
巻: 44 ページ: 1434-1443
10.1016/j.immuni.2016.05.012.
http://www.osteoimmunology.com/