研究課題/領域番号 |
15H05654
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
渡邊 真弥 自治医科大学, 医学部, 講師 (60614956)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | A群レンサ球菌 / 劇症型レンサ球菌感染症 / マウス感染モデル / 遺伝子発現解析 / RNA-seq |
研究実績の概要 |
A群レンサ球菌は、咽頭炎や蜂巣炎などの局所感染症の起因菌である。一方で、劇症型レンサ球菌感染症など重篤な侵襲性感染症を引き起こす。局所から全身へ症状が進行する際に、A群レンサ球菌は自身のゲノムを変化させ高病原型の菌へ変化すると考えられている。しかし、ゲノムが変化した際にどのような遺伝子群の遺伝子発現変化が起こるかの詳細は明らかになっていない。本研究の目的は、マウス感染モデルを用いてA群レンサ球菌の遺伝子発現ネットワーク解析を行い、全身感染に関わる遺伝子群を推定することである。我々は、マウス皮膚感染モデルから回収した菌をゲノム解析した結果、4種の転写調節因子に変異が入ることを明らかにしている。平成27年度は、これらの4種の遺伝子の破壊株と過去に報告された劇症型に関与する遺伝子破壊株を作成し、その病原性をマウス感染モデルにより評価した。転写調節因子破壊株のマウスに対するLD50は、野生株と比較して、①変化しない、②2.8倍低下した、③2600~4600倍低下したものと、変化に富んだものであった。この病原性の差がどの遺伝子群の発現変化によるものかを明らかにするために、作成した破壊株をマウスの腹腔内に投与し経時的に菌を回収後、次世代シークエンサーを用いたRNA-seq解析と階層クラスタリング解析・ネットワーク推定を行った。その結果、LD50が劇的に低下した株は一群の病原遺伝子の発現が上昇していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画案通り、マウス皮膚感染モデルにより変異が起こった転写調節因子の破壊株を作成し、その病原性を評価した。さらに、それらの破壊株を用いて、マウス感染モデルとRNA-seq解析を組み合わせて、レンサ球菌全身感染時における遺伝子発現解析を行った。このため、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、全身感染への移行に関与すると推測される転写調節因子のin vivoでの遺伝子発現ネットワークを明らかにするために、作成した破壊株をマウスの腹腔内に投与し経時的に菌を回収後、次世代シークエンサーを用いたRNA-seq解析と階層クラスタリング解析・ネットワーク推定を行った。平成28年度は、前年度行った解析の正確性を証明するために、マウス感染モデルから分離された突然変異株と遺伝子破壊株の遺伝子発現を比較する予定である。本研究により、A群レンサ球菌が引き起こす重篤な侵襲性感染症の発症に重要な遺伝子群を明らかにしたいと考えている。
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