1) 背景と目的:本研究は、急速に高齢化が進む日本の諸地域において、医療系専門職主導ではなく地域住民が主体となり、地域の健康課題に対して健康づくり活動・健康教育を進めるためのモデルを、アクションリサーチによって開発することを目的とする。 2) 方法:2015年から2018年度にかけて東京都台東区・文京区を中心とする地域(谷中・根津・千駄木エリア)をフィールドとして、住民参加型アクションリサーチ(CBPR:Community-based Participatory Research)の枠組みで、地域の健康課題を同定しつつ、住民とパートナーシップを構築しながら、地域のソーシャルキャピタルを活用した健康向上へ向けてのアクションを行なった。 3) 結果:東京の谷根千(谷中・根津・千駄木)エリアのソーシャルキャピタルとして、古民家、銭湯、お寺などが、住民に集い場としてゆるいつながりを作り、ウェルビーイングの向上につながるような多機能な場として機能していることが分かった。またこの地域の課題として、孤立している人々の健康課題が挙げられた。そこで、課題に対するアクションとして、住民と研究者・専門職が協働して、古民家などを会場にしたウェルビーイング向上につながる活動を定期的に開始した。具体的には、映画上映会、マインドフルネスの会、ダイアローグ(対話)の会、落語会、モバイル屋台を用いたアウトリーチなどを行なった。2018年度には、映画製作プロジェクトを立ち上げ、地域の人々と協働して25分の短編映画を製作した。 4) 考察:CBPRの原則にそって、地域の人々と協働するプロジェクトを進め、一定の成果を得た。活動の維持発展において、住民と専門職のパートナーシップを形成することが成功の鍵となった。住民の「生活者」視点で専門職が活動すること、地域を巻き込むよりも「巻き込まれる」ことが重要であると考えられた。
|