研究課題/領域番号 |
15H05659
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
芳賀 早苗 北海道大学, 保健科学研究院, 博士研究員 (60706505)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イメージング / 生体分子 |
研究実績の概要 |
本研究は、分子標的治療薬の治療効果・有効性と毒性・副作用を、動物実験においてより迅速かつ理論的に確認・予想し、さらにその効果を時空間的に理解するための技術開発を目的としている。これを達成するためにいくつかの主要研究プロジェクトに分けて研究を行うが、本年度は特に1、抗原・抗体反応に依存する光プローブの開発、2、抗体プローブを生体内で目的の臓器の細胞内まで送達するデリバリーシステムの開発について、それぞれ実験を進めた。 1、抗原・抗体反応に依存する光プローブの開発:このプローブは抗原・抗体反応が起こる際に(それぞれの抗体が同一抗原内の近傍エピトープを認識、結合することで)、分割(不活性化)したルシフェラーゼが再構成して活性化するようにデザインし開発を進めた。プローブ(発光部位)タンパクは、分割したルシフェラーゼ(Luc-N/Luc-C)にそれぞれタグを結合させた。これらを精製し、電気泳動で発現を確認ののち精製を行った。一方抗体側は、ターゲットとして腫瘍細胞表面に表出している分子を選び、これに対するポリクローナル抗体にタグに対する基質を付加した。上述2種類のプローブと抗体をそれぞれ共有結合させ、1式の抗体プローブを作製した。今後このプローブが確かにデザイン通りの構造になっているか、精製して確認段階へ進む必要がある。 2、抗体プローブのデリバリーシステム開発:生きた細胞内へ抗体を送達させるシステムとしてリポソームをベースとしたシステムを利用しており、より効率よく物質を細胞質に送達するための修飾を既に行っている。抗体搭載プローブの送達を想定して、ます免疫グロブリンの細胞内への導入を試みたところ、細胞質への抗体の送達が確認できた。またこの送達機能は、非常に迅速で安定していることがわかった。今後は、実際に1で作製したプローブが、本システムによって細胞内に導入できるかの検討を行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究項目である「抗体光プローブの開発」では、抗原・抗体反応が起こる際に分割したルシフェラーゼが再構成して活性化するデザインをもとに開発を進めており、前述のとおりプローブ側と抗体側のそれぞれにタグ・タグに対する基質を付加し、1式の抗体プローブを作製した。ところがプローブ側の作製段階で、精製時に蛋白質分解を起こしたことが判明した。これは当初の計画では予想外の結果であったが、変性のない適切なプローブ精製条件を確立する必要があったため、研究期間を延長して精製条件を再検討しプローブ作製を行った。現時点で1式の光抗体プローブの作製まで進み、最終的な確認作業が残されている。 「デリバリーシステム開発」については、おおむね当初の計画どおり研究が進んだため、本システムにおける物質(抗体)の送達が確認できた。 以上のとおり、一部段階で生じた課題により研究期間を延長して対応したものの、これは計画当初予想できないものであったため、研究自体はおおむね順調に進展していると評価した
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的を達成するために、今後も1、抗原・抗体反応に依存する光プローブの開発、2、光プローブを搭載した抗体を生体細胞内まで送達するシステムの開発、を進め、さらに3、光プローブ抗原標識システムの小動物における動態・毒性試験、および4、疾患モデルを用いたproof of conceptを加えて各研究を進める計画である。 次年度については、プローブ作製を最優先に研究を進め、光抗体プローブの完成を目指す。またこれまでの検討で、プローブのターゲットとしてより臨床病態上重要な役割を果たす分子(抗原)を探す必要が生じた。これら分子についても次年度以降調査・検討を始める。この検討で候補に挙がったターゲット分子は、これまでの研究における光プローブ作製のメソッドに基づきデザイン・作製する予定である。 2、細胞内デリバリーシステムについても、昨年度から引き続き検討を進める。これまで物質(抗体)の細胞内への送達が確認できているため、細胞内に送達した物質の機能確認、光抗体プローブ送達の検討およびその機能解析を進める。効率よく、毒性の少ないシステムを目指し、各段階で問題点などが生じれば適宜改良等を行う。 また、研究後半では小動物疾患モデルをもちいた検討に取り掛かるが、その前段階として、マウス疾患モデル作製の準備にも順次取り掛かる計画である。
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