研究実績の概要 |
平成28年度は、予定していた、和歌山県で農場・道路整備に従事する男性現業公務員(41人)の手指振動感覚閾値(VPT)測定に、レイノー現象の既往がある男性林業従事者(13人)の測定を追加した。また、非作業者9人を対象にした測定も実施した。 対象者からは、自記式質問票により自覚症状(手の循環症状[レイノー現象・冷え等]・神経症状[しびれ・痛み等]をはじめとする症状)、職歴等についての情報を得た。9つの周波数(SAI受容体に対応する3.15・4・5Hz、FAI受容体に対応する20・25・31.5Hz、FAII受容体に対応する100・125・160Hz)の振動刺激に対する対象者のVPTを測定した。この測定後、10℃の水に10分間手を浸し、浸漬終了直後・5分後・10分後にVPTを測定した。また、Stockholm Workshop Scaleによる問診と診察により自覚症状(手の循環症状・神経症状)の確認を行った。林業群データをもとに、自覚症状の有無とVPTの値からROC曲線を描き、AUC値の変化を評価した。 林業群(累計53人、年齢平均[標準偏差]60.5[11.8]歳)は公務員群(累計87人、52.7[6.0]歳)に比べて、VPTが有意に高い値を示した。各自覚症状を指標とした場合、9周波数のうち125Hzでは、冷水浸漬前と浸漬終了10分後の値におけるカットオフ値[AUC値, 感度, 特異度]は次の通りであった。循環症状:121.6 dB[0.59, 67%, 60%]→128.4 dB[0.69, 78%, 63%]、神経症状:121.6 dB[0.68, 70%, 73%]→132.8 dB[0.79, 59%, 88%]。冷水浸漬試験によるAUC値の上昇を認めた。 冷水浸漬試験実施で、VPTを用いた振動障害検査精度の上昇を得られると考えられた。
|