平成29年度は、振動工具を取り扱わない者(非作業者)9人を対象に、手指振動感覚閾値(VPT)を測定した。この結果を、過年度の非作業者16人における測定結果と併せて解析した(計25人(男性16、女性9)における年齢の平均[標準偏差]:21.8[2.0]歳)。 対象者からは、自記式質問票により自覚症状(手の循環症状[レイノー現象・冷え等]・神経症状[しびれ・痛み等]をはじめとする症状)、職歴等についての情報を得た。9つの周波数(SAI受容体に対応する3.15・4・5Hz、FAI受容体に対応する20・25・31.5Hz、FAII受容体に対応する100・125・160Hz)の振動刺激に対する対象者のVPTを、ISO 13091準拠の振動感覚計で測定した。この測定後、10℃の水に10分間手を浸し、浸漬終了直後・5分後・10分後にVPTを測定した。また、Stockholm Workshop Scaleによる問診と診察により自覚症状(手の循環症状・神経症状)の確認を行った。 測定結果を、作業者(過年度に測定済み)と非作業者で比較したところ、作業者は非作業者に比べて高いVPTの値を示した。作業者の中で自覚症状を有する者と、非作業者では、VPTの差がさらに著明であった。この傾向は、冷水浸漬試験実施後のVPTにも認めた。 以上の結果から、VPTの精密検査におけるISO 13091準拠の振動感覚計の有用性を示した。
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