研究実績の概要 |
背景:乳幼児突然死症例に対し、診断・治療・予防といった「死体の総合医としての法医学」を掲げ、特に機能性疾患の診断・治療・予防方法の確立を行ってきた。 3年目にあたる本年度は、2年目に行った乳幼児突然死の遺伝子変異解析の論文化を行った。一方で、突然死71例中に死因につながる変異を検出できたのは多く見積もっても11例であり、残りの大半の症例で遺伝子変異は確認できなかった。従って、乳幼児突然死を遺伝子変異単独で説明するのは困難であった。そこで、突然死とrisk factorについて検討を行った。 方法:元論文で変異が検出されなかった60例を対象に、過去に不整脈のrisk factorの可能性が示唆されている変異G38S-KCNE1, G643S-KCNQ1, K897T-KCNH2, H558R/P1090L/R1193Q-SCN5Aについて、突然死群とデータベース上の健常人の頻度との相関関係を統計学的に検討した。 結果:いずれの変異も突然死群との頻度に有意差は認められなかった。 考察:これら6つの変異はそれぞれ電気生理学的機能解析実験や個別の症例報告で不整脈を引き起こす可能性が示唆されているものであるが、突然死全体としてみた場合にrisk factorとなるものではなかった。また、SCN5A遺伝子については、これら3つの変異を複数持つものがより不整脈を引き起こしやすいとする報告もあるが、ハプロタイプ毎の解析でも差は見られなかった。従って、個別では不整脈で死亡した児の存在を否定するものではないが、risk factor変異とは考えにくい。
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