これまで「機能性疾患の解明」をかかげ、原因不明の乳幼児突然死の中に多数の代謝性疾患・遺伝性不整脈疾患が隠れていることを明らかにしてきた。一方、原因不明の突然死は乳幼児に限らず若年者にも多くみられる。多くは遺伝性不整脈や心筋症であり、主に心筋イオンチャネルの遺伝子解析がすすめられてきた。 ところが、先天性ミオパチーなどの筋疾患と突然死の関連は報告されてはいるものの、その遺伝子背景や病態メカニズムについてはあまり知られていないのが現状である。今回、若年性突然死症例において、死後の病理学的検索でミオパチーと判明した症例に、遺伝子解析を行ったところRBM20遺伝子変異・DMPK遺伝子のCTGrepeatの増加が認められた。 これらの遺伝子変異はRNAのsplicingに影響を及ぼす遺伝子であるため、心筋・筋肉のRNAを抽出し、RNA sequencingを行ったところ、LDB3遺伝子のエクソン11のabnormal splicingが認められた。このabnormal splicingは過去に筋硬直性ジストロフィー患者でも報告されており、今回の症例の心臓病変・筋肉病変の原因を説明できる。 従来の解析・研究では、代謝疾患や不整脈に焦点を当てたものが多く、次世代シーケンサーを用いた網羅的解析でも筋疾患はパネルに含まれていないことも多かった。今回の症例を通し、解析パネルの再検討が今後必要になると思われる。また、遺伝子変異の検出だけに着目するのではなく、RNAseqなどの、splicing異常にも着目する必要があると考えられた。
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