研究課題
肺動脈性肺高血圧症(以下、PAH)は、肺動脈圧の上昇から右心不全を発症しうる生命予後不良の難治性疾患である。膠原病や先天性心疾患に伴うPAHに加えて、特発性PAH (idiopathic PAH)や家族性PAH (familial PAH)は比較的若年に発症し極めて予後不良である。原因はいまだ一部の遺伝子異常が明らかになっているものの、それのみでは説明がつかず、他の遺伝子異常の存在、また、epigenetic制御の可能性、何らかの外的因子の重要性、など未だ病態解明には疑問点が残されている。本研究では、PAH患者からのRNA検体を用いて、long non-coding RNA (lncRNA) Array解析を実施した。その結果、健常者コントロールRNA検体と比較して、PAH患者RNA検体では一部のlncRNAの発現量が大きく異なっていることが明らかとなった。Heat-map解析・PCA解析等も施行し、多角的にlncRNA発現量について精査した。発現量がコントロールと比較して大きく異なるlncRNA複数個を絞りこんだ。定量的RT-PCR法を併用することによって、Array解析結果との相関性を調べ、最終的にPAH病態制御に重要な役割を果たしていることが予想される候補lncRNAを絞り込むことに成功した。また、PAHの新規発症原因遺伝子変異の同定に成功し、日本人患者においても家族性発症例を含んだ複数症例でSOX17変異の存在を確認した。また、欧米のコンソーシアムには認めない日本人に特徴的なPAH関連遺伝子としてRNF213変異を同定した。PAH患者の治療反応性や予後を後ろ向きに解析したところ、RNF213変異を有するPAH患者は、他の患者に比べて明らかに治療反応性が悪く、予後不良な患者群であることが判明した。これはPAHにおける遺伝子診断に基づく個別化医療への重要な成果と考える。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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J Heart Lung Transplant
巻: 39 ページ: 103-112
10.1016/j.healun.2019.08.022.