研究課題
関節リウマチは、日本の人口の約0.5%の患者を有する最も頻度の高い自己免疫疾患の一つであり、滑膜の炎症に伴う進行性の骨破壊を生じるため、患者の運動機能が著しく制限される。そのため、骨破壊による関節機能障害の制御が、リウマチ治療の最大の課題である。関節リウマチにおける関節破壊は、関節を包む滑膜の炎症から始まり、滑膜の増殖、パンヌスの形成、骨・軟骨破壊へと進行していく。その病態形成には、破骨細胞、マクロファージ、T細胞が複雑に関与すると考えられている。しかしながら、「それぞれの細胞が、いつどのようにして関節内に遊走してきて、関節炎が発症するのか」という関節破壊に関わる細胞の遊走制御や動態については、これまでほとんど解明されていなかった。本研究では、これまで独自に開発・応用してきた生体関節内の二光子励起イメージング系を活用して、関節炎・関節破壊に関わる炎症細胞(破骨細胞・マクロファージ・リンパ球)の遊走動態を可視化し、関節炎の発症メカニズムを明らかにするとともに、関節リウマチ治療において臨床応用されている分子標的治療薬の生体内動態をin vivoで可視化し、分子標的治療薬が標的細胞に及ぼす効果や薬効発現の機序を実体的に解明する。平成27年度は、関節炎を誘導した動物の生きた関節内における破骨細胞やマクロファージの動態を経時的に可視化し解析を行った。平成28年度以降は、これらの成果をもとに、関節リウマチの発症・増悪メカニズムの解明および分子標的治療薬の薬効評価を行う。
2: おおむね順調に進展している
蛍光生体イメージング技術を駆使して、個体を生かしたまま炎症関節内における生きた細胞動態の可視化に成功しており、平成27年度終了時としては順調に経過している。
現在、分子標的治療薬として、炎症性サイトカインを標的とする生物学的製剤や、T細胞の活性化を阻害する生物学的製剤、JAKを標的とした低分子量化合物が本邦のRA治療において臨床応用され、「早期の診断と治療介入により寛解を目指す」というのが主な指針となっている。一方で、患者によって薬剤の効果にはばらつきがあり、「関節炎の発症過程において、“どのタイミングで(どれほど早期に)”、“どの薬剤”を選択して使えばいいのか」を判断する明確な基準がない。また、生体内に投与した分子標的治療薬が“実際に”関節炎局所に運ばれて効いていることを確認した報告はなく、「分子標的治療薬が生体内で“いつ”、“どこで”、“どのようにして”効果を発揮するのか」、その薬理作用の詳細についても未解明な点が多い。今後、本研究で確立した蛍光生体イメージング技術を駆使して、炎症関節内における各種薬剤の体内動態や標的細胞に及ぼす効果など、薬効発現の機序を実体的に解明する。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 18738
10.1038/srep18738
The Journal of Experimental Medicine
巻: 212 ページ: 1931-1946
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