膜が損傷したリソソームがオートファジーで処理される機構「リソファジー」に関しての研究を行った。(1)損傷した膜がオートファジーによって認識される機構に関しては、Galectin3を用いた膜の破れの検知と、ユビキチン、LC3、Lamp1などのマーカー分子の観察によりユビキチンリガーゼの候補分子を同定し、機能解析を行った。現在論文作成を進めている。(2)リソソーム病におけるリソソーム膜の脆弱性に関しては、昨年に引き続きマイクロビーズを用いた膜損傷モデルを用いて解析を行った。患者由来細胞は不死化しても生存率が低い事から、セルライン上で特にコレステロールに注目し解析を進めた。リソソーム内のコレステロール量をU18666Aを用いて増加させた場合に膜の脆弱性が確認され、またサイクロデキストリンを用いてコレステロールを減少させた時には安定化した。一方で興味深い事にコレステロール量が増加しても減少してもオートファジーのプロセスがストップしてしまう事が確認された。今後リソソーム病のノックアウト細胞などを用いて効果を確認する。(3)エクソーム解析で同定した世界で全く新しいリソソーム病を同定した。本疾患の患者由来皮膚線維芽細胞において、オートファジー、エンドサイトーシス、リソソーム機能の評価を行い、論文にて報告した。(4)本研究の研究期間中に代表者は「学振特別研究員PD(大阪大学)」→「大阪大学特任助教」→「川崎医科大学特任准教授」と所属が変わった。特に最後の異動では機関を移動したため多少備品の整備が必要となり、研究にも遅れが生じたが、異動先の研究室はリソソーム病と脂質の解析を専門としており、(2)の研究を今後一層飛躍させられると期待出来る。
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