研究課題
1.スポットスキャニング照射法とパッシブ照射法の陽子線治療のDistal end の生物効果をEMT6細胞を使用して測定したところ、両者とも、物理線量と比較して生物効果が高いことがわかり、またスポットスキャニング照射では、パッシブ照射より、生物効果が高い傾向がみられた。2.陽子線治療の酸素効果比をEMT6細胞等において測定したところ、X線治療と比較して明らかに低いことがわかった、しかし炭素イオン線ほどはひくくはない。そのため、陽子線治療は、X線治療では効果の低い、抵抗性腫瘍に対して、より効果が高い可能性があり、分割照射による再酸素化などのメリットも考えられるため、炭素イオン線のような極端な寡分割照射は望ましくなく、中分割程度の照射法などがメリットのある可能性が示唆された。3.DMSOを用いて、陽子線治療の殺細胞効果としての直接効果を測定したところ、X線治療より高いことがわかった。酸素効果比が低いことの一因であることが予想された。4.連携研究機関と共同で、生物効果などが判明している細胞へ、Cell cycleを可視化するために、細胞周期モニタリング(Fucci)の安定発現細胞株を作成中である。5.タイムラプスイメージング機器を導入し、予備実験として、陽子線の殺細胞効果を可視化し、また低酸素イメージングを使用して、多数の培養細胞のspheroid形成における細胞集合体の形成の違いを可視化した。また抗がん剤と照射の併用研究にむけてのアポトーシス活性などの基礎検討をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
上記、1、2、3の基礎検討に関しては、論文化を行い、Int J Radiat Oncol Biol Phys.に採択がされ、今後掲載予定である。また細胞周期をタイムラプスイメージングで可視化、検討するための細胞の安定発現細胞株は、他の連携研究機関と共同で作成中である。今年度以降の研究のための、化学療法の増感効果や酸素効果比などの基礎検討のデータ収集がすんだため、今後の発展研究として、spheroidを使用したり、抗がん剤の試適条件などを使用して、増感効果などの検討も予定通り行える予定である。
研究実施計画書の通り、以下の研究を行っていく予定である。1. 陽子線の生物効果などをsingle cellから、より人体に近い、spheroidを使用した発展型の検討を行う。2. ギメラシルなどを使用した増感効果・殺細胞効果などを、タイムラプスイメージング技術などを使用して、検討していく。3. Fucciを導入した培養細胞における、陽子線の細胞周期にあたえる影響を検討していく。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)
International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics
巻: 95 ページ: 95-102
10.1016/j.ijrobp.2016.01.017