研究実績の概要 |
研究代表者らは、器官発生初期プロセスで生じる異種細胞間の協調的相互作用を再現することによりヒトiPS細胞から移植可能な肝臓原基(肝臓の芽)を誘導する手法を確立した(Takebe, et al. Nature, 2013, Nature Protocols, 2014)。本研究では、この複合組織誘導技術の医療応用を目指し、同所性移植を実現する大量かつ均質な小型の肝臓原基を作製するための基盤的細胞操作技術を開発するとともに、同所、および異所を含むさまざまな移植部位を比較することにより、肝不全症治療の実現を目指したヒトiPS由来肝臓原基移植操作技術の最適化を試みている。 これまでに、同所性移植に最適な直径を有するヒトiPS細胞から肝臓原基を一期的に大量製造する培養手法の確立に成功した。すなわち、酸素透過性・酸素非透過性のいずれかのマイクロパターンプレートを用いることで、直径200μm程度のヒト肝芽を創出法することに成功した。今後、用いる細胞の分化段階の検討や、細胞混合比率の検討を行うことで、ヒト小型肝臓原基作製方法の至適化図る。 また、免疫不全マウスを用いた頭蓋内と腎被膜下へのマウス同種肝芽移植、および、小型スフェロイドの同所性移植について検討を開始した。得られた組織は、ライブイメージング等によって、機能的な血管網を構成できること、肝組織様構造が再構築されることを示した。今後、障害モデルにおいて類洞や胆管などの高次構造が形成可能であるか否か、さらに、非障害モデルにおいても肝芽の移植個数、培養日数、大きさなどの諸条件を検討したうえで、前処置を施さない正常肝臓への生着を検討する。
|