研究課題
肝線維症に対する抗ウイルス治療は一定の効果をあげているが、肝機能改善は必ずしも期待できていない。本研究は、ウイルス排除療法の適応とならず、肝線維化の進行により肝硬変が悪化する患者を対象とした、「脂肪組織由来多系統前駆細胞を用いた肝線維融解療法の開発」を最終目標としている。そのため、平成27年度においては、脂肪組織由来多系統前駆細胞の、シート化条件の検討、脂肪組織由来多系統前駆細胞シートを用いた肝線維溶解療法の作用機序(Mode-of-Action)の確認を行った。脂肪組織由来多系統前駆細胞は、成体幹細胞の中でも未分化性が高く、培養機材よりも細胞同士で凝集する傾向にある。シート化には通常培養する細胞数より多くの細胞を必要とするため、残念ながら、通常の培養条件より細胞を多く播種するという定石法では、細胞は凝集塊を作るばかりで全くシート化させることはできなかった。しかし、シート化培養前に培養皿に工夫を施すこと手法を用い、通常の培養条件程度の細胞数で効率よくシート化させる最適条件を見つけることができ、脂肪組織由来多系統前駆細胞のシート化技術を開発することができた。また、脂肪組織由来多系統前駆細胞からのサイトカイン分泌について検証した結果、肝内線維を溶解する作用を持つサイトカインが、繊維芽細胞や通常の脂肪組織由来細胞に比べ、多量に分泌されていることがわかり、本機序がMode-of-Actionになる可能性があると考えられることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
初年度に計画していた脂肪組織由来多系統前駆細胞の、シート化条件の検討、脂肪組織由来多系統前駆細胞シートを用いた肝線維溶解療法の有効性・MOA確認については概ね終了し、一定の結果を得ることができた。安全性試験等も計画していたが、昨今の再生医療課題の臨床応用に向けた状況を鑑み、各動物実験に関しては、規制当局からの対面助言等の指導後に行うことが適切であるという指摘を受けたことから、現在、事前面談等を通じ、実験系の確立を急いでいる。平成28年度に計画している動物実験と並行して行うため、平成27年度に行えなかったとしても、課題全体の進捗に大きな影響を及ぼさない。
脂肪組織由来多系統前駆細胞投与の有効性・安全性評価を経て、各種書類の整備を行い、臨床に向けた準備を行う。動物試験を含む各種試験については、試験系を確立の上、実施する。
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