研究課題
本年度は、Muse細胞移植の脳深部白質梗塞に対する有効性試験を中心に研究を実施した。まず、ラット中大脳動脈閉塞モデルを用いたMuse細胞移植の予備実験を行い、移植3ヶ月後にMuse細胞が間葉系幹細胞より有意に脳に生着することや、Muse細胞が高率に神経系細胞に分化することを証明した (Stem Cells., 2016)。さらに、Endothelin-1とN(G)-nitro-1-arginine methyl esterの混合液をSCIDマウスの内包に定位的投与し、脳深部白質梗塞モデルを確立した (Brain Res., 2015)。この脳深部白質梗塞モデルを用いて、脳梗塞発症2週間後に定位的なMuse細胞/ 間葉系幹細胞移植(脳梗塞周囲)を行い、corner test/ cylinder testを用いた行動学的評価を行った。その結果、脳梗塞発症12週後の段階で、PBS群/ 間葉系幹細胞移植群と比較してMuse細胞移植群で有意な行動学的改善が確認された。一方で、梗塞巣の体積に関しては明らかな縮小効果を認めなかった。これらの所見から、Muse細胞は、脳保護効果ではなく、脳深部白質梗塞により断裂した白質線維連絡の再建により、機能回復を促した可能性が示唆された。以上の結果から、脳深部白質梗塞に対するMuse細胞移植の治療効果が明らかとなった点で意義がある。今後、Muse細胞移植の作用メカニズムについて解明する予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、脳深部白質梗塞のマウスモデルに対するMuse細胞移植の治療効果を証明することができたため、順調に研究計画は遂行されていると考える。
来年度以降は、(1)Muse細胞移植の作用メカニズム解明、(2)Muse細胞移植の安全性試験、の2点を中心に研究を推進する予定である。作用メカニズム解明では、パッチクランプ法、順行性神経路標識法、選択的移植細胞排除法などを用いて、組織学的/ 電気生理学的に白質線維再建について検証を行う。Muse細胞安全性試験では、移植1年後のマウス脳切片に対して組織学的検討を行い、移植細胞による腫瘍形成に有無等について確認する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Stem Cells.
巻: 34 ページ: 160-173
10.1002/stem.2206.
Brain Res.
巻: 1629 ページ: 318-328
10.1016/j.brainres.2015.10.039.