研究課題
本年度はMuse細胞移植の脳深部白質梗塞に対する有効性試験、およびMuse細胞の作用メカニズム解明を中心に研究を推進した。前年度に確立した脳深部白質梗塞モデル(Brain Res., 2015)を用いて、脳梗塞発症2週間後に定位的なMuse細胞/ 間葉系幹細胞移植(脳梗塞周囲)を行い、corner test/ cylinder testを用いた行動学的評価を前年度と同様に行った。脳梗塞発症12週後の段階で、PBS群/ 間葉系幹細胞移植群と比較し、Muse細胞移植群で統計学的に有意な行動学的改善が再確認された。一方で、梗塞巣の体積に関しては、統計学的に有意な縮小効果を認めなかった。組織学的検討により、移植したMuse細胞は主に神経細胞に分化し、脳梗塞周囲に生着していることが確認された。さらに、順行性神経路標識法を用いたところ、脳梗塞によって断裂した神経連絡が、Muse細胞移植群では有意に回復していることが分かった。移植したMuse細胞を選択的移植細胞排除法により除去すると、Muse細胞の移植効果は完全に消失した。以上の結果から、Muse細胞は断裂した深部白質を再建することにより治療効果をもたらすことが解明された。また、Muse細胞移植の有効性について、再確認することができた。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、脳深部白質梗塞のマウスモデルに対するMuse細胞移植の治療効果および作用メカニズムについて明らかにすることができた。また、間葉系幹細胞と比較して、Muse細胞移植の優越性を証明することができ、順調に研究計画は遂行されていると考える。
来年度は、(1)Muse細胞移植の作用メカニズムの更なる解明、(2)Muse細胞移植の安全性試験、の2点を中心に研究を推進する予定である。作用メカニズム解明では、パッチクランプ法を用いて、電気生理学的な白質線維再建について検証を行う。Muse細胞安全性試験では、移植1年後のマウス脳切片に対して組織学的検討を行い、移植細胞による腫瘍形成の有無等について確認する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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