研究課題/領域番号 |
15H05681
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
猪瀬 弘之 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (30615711)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨代謝 / 軟骨代謝 / 靱帯骨化 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
世界最速で超高齢化の進行する我が国において、靭帯骨化症、骨粗鬆症及びそれに伴う骨折、変形性関節症といった運動器疾患の克服は喫緊の医療課題である。本研究の目的は、分子生物学的アプローチを利用して、靭帯骨化及びその進展機序を明らかにし、世界に先駆けて骨・軟骨代謝調節の新たな視点からの解明を目指す。さらに、未だ治療法が確立しない靭帯骨化症の発症メカニズムの解明によって、靭帯骨化症の治療薬の臨床応用に展開するための基盤研究とすることである。 我々は患者由来検体において細胞周期制御因子が靱帯骨化部で増加していることから、細胞周期制御因子による骨・軟骨代謝の調節機構に注目している。今年度は昨年度に引き続き、Cdk1の骨代謝における意義について検討した。in vitroでは骨芽細胞を分化させるとCdk1の発現は低下し、Cdk1の活性抑制は骨芽細胞増殖を抑制させた。反対に、骨芽細胞においてCdk1を過剰発現させると細胞増殖は促進した。これらのことからCdk1が骨芽細胞増殖に必須であることが示唆される。また、骨芽細胞においてcdk1をノックダウンすると骨芽細胞分化が促進された。in vivoにおいても骨芽細胞特異的Cdk1ノックアウトマウス(以下CKOマウス)から採取した頭蓋冠ではコントロールマウスと比べて骨芽細胞の分化マーカーが有意に増加していた。これらのことからCdk1は骨芽細胞分化を調節する機能をもつことが示唆された。更に、骨形態計測ではCKOマウスがコントロールマウスと比較して骨量や骨形成能が低下していた。そして、大腿骨骨折モデルを作製し、骨折治癒過程におけるCdk1の役割を調べた。コントロールマウスでは全例で骨癒合が確認できたのに対し、CKOマウスでは全例で遷延癒合を示した。これらのことから、マウスにおいてはCdk1が骨量維持と骨折の正常な治癒過程に必須であることが示唆された(現在英文誌投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は昨年度に引き続いて主として骨代謝におけるCdk1の働きについて検討し、in vitroでCdk1が骨芽細胞増殖において必須であるだけでなく、正常な骨芽細胞分化においても必須であることを明らかにした。また、in vivoにおいても骨芽細胞特異的Cdk1欠損マウスが低骨形成による骨量低下を示すこと、また、骨芽細胞特異的Cdk1欠損マウスにおいて骨折治癒が遷延することを明らかにするなど、骨代謝におけるCdk1の意義について明らかにすることができ、これらの成果についてまとめ、英文誌投稿中であるため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験により、骨・軟骨代謝における細胞周期制御因子の作用が明らかになった。そこで、今年度は細胞周期制御因子を治療標的とした靱帯骨化の抑制に向けての検討を行う。このまま研究計画に従って継続していく。
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