研究課題
生体計測実験系の確立と多彩な条件下における基底板上の有毛細胞動態の三次元可視化を本年度の目標とした。昨年度構築した新規断層イメージング装置を駆使して生きたモルモットの感覚上皮帯の振動を観測したところ、2点の課題に直面した。基底板に特有の①低い反射率と、生動物を用いるが故に起こる②微小体動である。これらの課題に対処するため、実験系の改良を計画した。具体的には、①に対して、よりパワーの強い新規広帯域光源を購入した。②に対しては、測定時間の短縮が期待されるハイスピードカメラを購入した。生体計測が当初の予測より困難であったため、基底板振動の三次元可視化に向けて達成するべきマイルストーンを計画に追加した。微小体動の制御には、動物の麻酔管理や頭部の固定、取得信号の解析手法など生体計測独特の経験の蓄積が必要と判断し、レーザー振動計を用いた生体計測を新たなマイルストーンとして設定した。独自に構築したレーザー振動計を用いて、ミラーを対象物として対応周波数1kHz~70 kHz、最小振動振幅 10 pmを達成し、さらに一次元の生体振動計測にも成功した。生動物の基底膜振動の計測において、反射物を加えることなくナノスケールの精度を達成したことは本邦で初めてとなる。さらに、装置の構築の際、新たな派生技術を取得することができた。装置の解析手法に着目し、従来法では不可能であった「振動の中心位置のずれ」を、「振動振幅」と同時にナノスケールで計測できる振動計測装置の開発にも成功した。
3: やや遅れている
生体内計測を行う上で、2つの課題点が明らかとなった。(A)光源パワーの強度が微弱であったため、解析に十分な物体光(物体からの反射)が得られなかったこと、及び(B)生体特有の振動・電気ノイズにより、振動信号のS/N比が悪化したこと、である。以上二つの課題により、生モルモットの有毛細胞の振動計測には至らなかったため、H29年度の数理モデル化へ至る目標を達成できなかった。
現在使用している光源よりもパワーの強いNKT Photonics社製広帯域光源と、フォトロン社製ハイスピードカメラを導入した。これにより、より検出可能明瞭なな強度の物体光の確保と、測定時間の短縮による生体ノイズの減少が期待される。H29年度に動作確認の予定である。また、さらに別途方式の異なる断層イメージング装置の作成も計画している。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
Biomed Opt Express
巻: 8 ページ: 608-621
Pfugers Arch
巻: 468 ページ: 1609, 1619
10.1007/s00424-016-1853-2
Pflugers Arch
巻: 468 ページ: 1637, 1649
10.1007/s00424-016-1871-0