研究実績の概要 |
顎顔面の発生には様々な顔面突起の適切な成長及び癒合が必要不可欠である。異常な顔面突起の成長や癒合は顎顔面形成異常の原因となり、その中でも口唇口蓋裂や後鼻孔閉鎖症は最も高頻度で発生する疾患である。今回我々が着目したレチノイン酸(以下RA)シグナルは上記疾患との関連が示唆されてはいるものの、双方の疾患発症のメカニズムを包括的に理解するには至っていない。本年度は胎生時期特異的にRdh10をノックアウト出来るマウスの(Ert2Cre;Rdh10fxマウス)上顎複合体を摘出し、RNAseqを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行った。それぞれ3体ずつのサンプルを調整し、それらの中から更に全体の遺伝子表現パターンが近似したものをデータ解析に用いる事で重要な遺伝子の絞込みや正確な発現比較解析が可能となった。その中でも特に繊維芽細胞成長促進因子(Fgf)シグナル伝達経路においてノックアウトマウスで顕著な上昇が認められる事を見出した。更に同シグナルの変化がnasal epitheliumにおける細胞増殖や細胞死に変化を起こす事によりノックアウトマウスにおいて後鼻孔閉鎖症が発症する事を見出した。この様な結果は今後の矯正歯科臨床のみならず顎顔面形成不全全般の病態解明をする上で非常に重要な知見となる。また、この結果は多くの学会発表および国際誌への論文投稿を行い、受理された(Rdh10 loss-of-function and perturbed retinoid signaling underlies the etiology of choanal atresia. Kurosaka H, Wang Q, Sandell L, Yamashiro T, Trainor PA. Hum Mol Genet. 2017 Apr 1;26(7):1268-1279.)
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