研究課題/領域番号 |
15H05693
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐川 宏行 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (80178590)
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研究分担者 |
荻尾 彰一 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20242258)
野中 敏幸 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (30506754)
常定 芳基 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50401526)
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研究期間 (年度) |
2015 – 2019
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キーワード | 宇宙線物理学 / 最高エネルギー宇宙線 |
研究実績の概要 |
本科研費の研究者等が参加するテレスコープアレイ(TA)グループは、5年間の最高エネルギー宇宙線の観測で、その到来方向が特定の領域に集中するホットスポットを捉えた。本研究では、最高エネルギー宇宙線に対する地表検出器(SD)の有効観測面積をTAの4倍に拡張する(TAx4計画)。これにより、高い統計精度で、ホットスポットを含む異方性の精査観測を行い、最高エネルギー宇宙線を生む近傍超銀河宇宙の極限現象との関わりを研究し、その発生・加速・伝播機構を解明することを目的とする。 TA SDは、507台のプラスチックシンチレータ検出器を1.2km間隔で設置し、約700㎢をカバーしている。本研究では、500台のシンチレータ検出器を2.08km間隔で設置して、TA SDと合わせて約3,000㎢をカバーする。 はじめに、シンチレータからの光を集光して光電子増倍管(PMT)へ導くためのファイバーのレイアウト(検出器内での取り回し)を検討した。使用するPMTをTAで使用しているものよりも高い量子効率をもつものを使用することで、感度を減じることなくファイバーの本数を減らすことを実証し、検出器組み立て作業の効率化を実現できた。このR&Dをもとに100台のシンチレータ検出器を日本で組み立てた。検出器を少数台米国に輸送した後に、動作試験で問題がないことを確認した。残りの検出器を米国に輸送中である。 また、広範囲に展開するSDのデータ収集は、長距離無線通信ネットワークを用いて行う。そのため新しいSDエレキによる通信試験を行い、通信ネットワークの計画をまとめた。日本製の通信塔の部品を購入し、米国に輸送した。 TAx4の計画・進捗状況に関しては、夏の宇宙線国際会議等のいくつかの国際・国内会議で発表がなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の見積よりSDの製作費がかかることが分かったので、検出器のコスト削減を行った。SDの主要部は、粒子が通過した際に発光するプラスチックシンチレータ、集光のための光ファイバーとPMTである。TAのSDで使用中のPMTより高い量子効率をもつPMTを使用することによって、検出器の感度を落とすことなく、ファイバーの量を約4分の1にできることを実証し、検出器の組立作業の効率化もできた。検出器の最終仕様を決定して、平成28年1月と2月に100台のシンチレータ検出器の組立(上記主要部品をステンレススチール製の容器に組み込む作業)を行った。また、TAのSDの建設の際は、米国にシンチレータ検出器を輸送した後にPMTを取り付けたが、今回は米国で容器を開封する手間を省くために日本でPMTを検出器内に取付けた。そのために、まず少数台を米国ユタ州のTA宇宙線観測施設近郊の宇宙線センター(CRC)に輸送し、外観および動作試験に問題ないことを確認した。そのため、残りのシンチレータ検出器を日本から出荷する手続きは平成28年4月に入ってからとなった。 TAx4の通信ネットワークは、SD群一数か所の通信塔-CRCの間の長距離無線通信である。ネットワークの要は通信塔であり、高さ12mの昇降器付タワーとそこで運用される通信機器用の電源装置からなる。平成27年度に組み立て式である昇降器付きタワーの部品を購入した。SDアレイ、通信ネットワークなどTAx4全体の計画書がユタ大学の研究協力者を通して、米国土地管理局に提出された。TAx4の建設の許可が出次第、タワーの建設を行う。
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今後の研究の推進方策 |
日本でのシンチレータ検出器の製作を行う。また、SDのトリガー・データ収集用エレキの製作、その他の構成品の購入および米国ユタ州での最終組み立てを行う。TAx4の土地利用申請に対する米国土地管理局の許可の過程で、あるいは許可が下りた後に、a)すべてのSDの設置予定位置の現地確認(印となる杭打ち)、b)通信塔の建設、c)ヘリコプターによるSDの設置および調整を行い、500台の追加SDの設置を行う。現TAの面積を含めて、4倍の有効観測面積をもつ地表検出器アレイを完成させて、運用する。稼働状況をモニターして、SDの調整およびその後の保守を行う。 SDの建設中も現TAの観測は継続し、物理結果の更新をし、国内外の会議において発表する。TAx4完成後は、すべてのデータを合わせた解析を行い、結果を発表する。
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