研究課題
平成29年度の研究実績は以下のとおりである。1) 宇宙線データ収集システムテレスコープアレイ(TA)宇宙線観測装置で使用している無線LANモデムが本研究開始前に既に販売中止になったので、新しいモデムでのデータ収集システムを構築した。このデータ収集システムが実際の規模(1通信塔あたり約100台)で稼働するかどうかを予め試験することはたいへん重要である。ただし、本研究のTA拡張計画(TAx4)では、米国土地管理局(Bureau of Land Management : BLM)による地表粒子検出器(Surface Detector : SD)の設置許可がまだ得られていなかった。そこで、前年度(平成29年2月)に現TAサイトおよびTA低エネルギー拡張(TALE)サイトに隣接して設置可能なサイトにTAx4のSDを25台テスト的に設置した。TALEシステムと融合させた形で、100台規模の新データ収集システムとして稼働することを確認した。現在、データ収集の結果を精査して不具合を確認、修正しながら、安定稼働へ移行中である。2) 地表粒子検出器の製作平成29年には77台のシンチレータ検出器本体の組み立てを山梨県にある宇宙線研究所明野観測所において行い、米国へ輸送した。米国ユタ州ミラード郡デルタ市にある宇宙線センター(CRC)において、180台のSDの最終的な組み立てを大部分完了し、CRCに仮置き中である。3) TAx4サイトの土地使用の許可取得のための活動BLMとの土地使用に関する交渉をユタ大学を通して行った。それに関わることとして次の3つの主な活動を行った。a) SD設置予定箇所すべてに赴いて設置するのに問題がないかを確認した。約6割のSDの位置に関しては数チームで9日間かけて全地形型車両(ATV)を移動手段として用いてアクセス・調査を行った。残りの約4割に関しては、部分的にATVでアクセスできない領域があることから、ヘリコプターを移動手段として用いて数名で3日間でアクセス・調査を行った。b) TAx4サイトが広がるミラード郡とジュアブ郡の当局、住民およびその地域の開発を考えている会社に対する説明会を行い、意見を求めた。これに関連して、3度BLMの担当者とTAの担当者で直接の話し合いを行った。c) TAx4サイト内の遺跡、遺物に関する調査を行った。これは業者に委託してSD設置予定箇所付近にアメリカ先住民が残した遺構・遺物がないかどうかの調査である。4) 現TA装置の運用を継続しでデータ収集を行っている。その解析結果を国内外の学会で発表した。また、いくつかの結果を学術雑誌に投稿し、ひとつが出版済みで、もうひとつが印刷中である。
3: やや遅れている
本研究の申請時には、平成29年度に地表粒子検出器をTAx4サイトに設置する予定であったが、鳥獣保護期間外の設置可能な期間(平成29年9月~平成30年2月)中にBLMによる設置許可を得ることができなかったので、平成30年度に地表検出器の設置を行う予定である。
平成30年度には、日本の予算で25台、TA collaborationの韓国の予算で30台、合わせて55台のTAx4用のSDを組み立てる予定である。また、「8. 研究実績の概要」の3) の調査を反映させた情報に、平成30年度における植物等のサイトの部分調査の微調整をして、TAx4のための環境調査調書とする。最終的な確認の後に、通信塔の建設を行い、260台のSDの設置および通信調整をヘリコプターで行う。その後、データ収集の安定稼働へと移行する。初期稼働状況に関して、平成31年度の宇宙線国際会議で発表する。その後は、韓国が獲得した予算などに応じて、TAx4サイトに500台を目標としてSDを追加していく予定である。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (32件) (うち国際学会 21件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Astrophysical Journal
Physics Letters A
巻: 381 ページ: 2565-2572
10.1016/j.physleta.2017.06.022
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10.1093/ptep/ptx082
http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/~hsagawa/TAx4/