研究実績の概要 |
1. 平成28年度に導入した100 kHz動作する先端レーザーシステムについて、CEP安定化のための差周波発生の波長を長波長に変更(叫(1480 nm)=・(515 nm)-ω_2(790nm)→(ω_3 (2400 nm)=ω_1(1030 nm)-ω_2(1800 nm)した結果、CEPの安定性が向上した。OPCPA出力のCEPの安定性をf-2f干渉計を用いてシングルショット測定したところ、CEPの安定性は220 mrad (RMS, 20min.)となった。また、先端レーザーシステムから出力される近赤外パルスを、キセノンガス媒質に集光することにより、波長35-60 nmの領域に高次高調波パルストレインを100 kHz繰返しで発生させることに成功した。 2. 既存レーザーの数サイクルパルス出力を用いたポンププローブ計測によって、N_2^+のB-X状態間の反転分布に伴うLasing過程の研究を行った。N_2^+から放出された波長391 nmのLasingの強度は、遅延時間に対して2-3 fsの周期で振動することが分かった。この振動は、N_2^+のA-X状態間の量子ビートに相当することから、B-X状態間の反転分布が、A-X遷移によって促進されていることが実験的に示された。 数サイクルパルスを用いたコインシデンス運動量画像(CMI)のポンプ・プローブ計測を行い、アレン分子の2体クーロン爆発過程の収量が、アレン分子、アレン分子イオンの分子振動モードの周期と同じ周期で振動していることが明らかになった。 OPCPAの出力を用いてメタノール分子のクーロン爆発過程のCMI計測を行い、CMI計測が100 kHzの高繰り返しで行えることを確認した。 理化学研究所との共同研究として、投影型運動量画像計測装置を用いて、極端紫外域のアト秒パルス列による酸素分子のポンププローブ計測を行った。0^+イオン収量の遅延時間依存性をフーリエ変換したところ、酸素分子の解離性イオン化過程においては、0_2^+イオンの2つの電子状態^2Σ_g^+と3^2Π_uが重ね合わさった結果、1 fsで振動する電子・核波束が生成することが示された。さらに、アセチレン分子についてもCH^+イオン、C^+イオン、H^+イオンを検出し、同様のポンププロープ計測を行った結果、アセチレンイオンのX ^2Π_u状態がポンプパルス列によ
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る光イオン化によって生成した後、プローブパルス列の7次高調波(10eV)によって3 ^2Π_g状態に電子励起しc-c結合の解離が誘起されることが示された。 既存のレーザー光源から発生させた数サイクルパルスを希ガス媒質に集光し、極端紫外領域の高次高調波を発生させ、この極端紫外光と近赤外パルスを用いたポンププローブ実験によって、電子高励起状態に生成した窒素分子イオンの解離過程の実時間計測を行った。その結果、C状態に生成した窒素分子イオンが数十フェムト秒の間に解離する過程を、そして、シェイクアップ過程により生じた窒素分子イオンが近赤外光照射により二重イオン化したのちクーロン爆発する過程を実時間計測した。 3. 「THz波によるレーザーアシステッド電子散乱過程」を用いた分子イメージング法で用いるTHz波の波形を計測するため、電気光学サンプリング光学系を構築した。生成したTHz波のパルス波形を計測したところ、時間幅約2 ps、ピーク電場強度1.1kV/cmの単一サイクルTHz波の発生が確認された。OCS分子を標的分子とした数値シミュレーションによって、時間分解分子イメージング法を実現するためには13 kV/cmのピーク電場が必要であることが判明し、THz波発生・集光機構の改良が必要であることが示された。 時間幅7.4 fsの近赤外数サイクルレーザーパルスによるレーザーアシステッド電子散乱過程を観測した。I_2分子を標的分子としたレーザーアシステッド電子回折信号の数値シミュレーションによって、核間距離の時間発展を7.4 fsの時間分解能で追跡できることが示された。 平成29年度に構築した電子衝撃イオン化観測装置にフェムト秒レーザーを入射し、レーザーアシステッド電子衝撃イオン化過程の観測を試みた。電子衝撃の結果、希ガス原子および水素分子によって散乱される電子と、引き続いて起こる多光子イオン化過程によって生じる放出電子を同時計測し、その結果の解析から、電子衝撃による高励起状態の生成とその解離の経路を同定した。 4. H^+_2を対象として、電子-プロトン量子動力学をEx-MCTDHF法を使って計算し、Ex-MCTDHF法が、厳密計算が予想する分子解離と分子内振動励起を正しく再現することを確認した。CH_3OH分子の電子-プロトン波動関数の量子動力学計算プログラム開発を進め、近赤外2サイクルパルスと相互作用させた場合、電子運動の励起に伴いプロトン運動が誘起されること、そして、プロトン運動に明確なCEP依存性が現れることを明らかにした。また、N_2^+の断熱フロケ状態の解析から、B-X状態間の分布反転の機構を明らかにした。さらには。光電子と親イオンの分子振動状態間の量子的相関(エンタングルメント)に関する理論的解析を展開した。1次元のH_2モデルを使った数値計算から、エンタングルメントとコヒーレンスの関係を明らかにするとともに、エンタングルメントの程度が、励起レーザーパルスの特性(時間幅や強度など)によって敏感に変化することを示した。また、新たな多電子系の時間依存有効ポテンシャル理論を構築し、MCTDHF法における軌道関数の運動を1電子シュレーディンガー方程式を使って解析することを可能とした。 隠す
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