研究課題
研究プロジェクトの終盤を迎えこれまでの研究成果を論文等に纏める一方で、新型コロナウィルス感染拡大防止に配慮しつつ精力的な実験研究も推進した。これらの活動の結果、本年度も多くの研究成果を得ることができた。本プロジェクトで行った研究活動のまとめとして、特に精力的に研究を展開した量子ドットを用いた量子光源、量子ドット-ナノ共振器結合系の導波路集積、トポロジカルの概念を活用した光共振器や導波路構造に関する研究成果について、主要な学術論文誌にてそれぞれレビュー論文を発表した。その他本年度に得られた成果については、以下に示す3つの研究領域に分けて概要を報告する。1. 量子ドット・ナノ共振器形成基盤技術開発 :分子線エピタキシーによる量子ドット結晶成長技術のさらなる深化を図った。メタモルフィック構造を用いた長波発光量子ドットの均一形成技術の開拓を進めた。さらにはP型ドーピングの量子ドットアンサンブルへの影響を調べた。また、近接三重層量子ドットのさらなる高品質化に成功した。一方、昨年度までに数値計算により見出したトポロジカルな概念を用いた低群速度光導波路の作製と光学評価を行い、急峻導波路曲げに対してロバストな光伝搬特性の観測に成功した。さらには、群屈折率の精密な評価も行い、数値計算とよい一致を得た。2. 固体量子電気力学探究 :共振器結合系において、その放射の位相や偏光状態を制御することで、光スキルミオン結晶が遠方界において形成できることを理論的に見出した。また、数値計算を用いて、同現象が観測可能と期待される具体的な光構造についても明らかにした。トポロジカルな概念を活用した低群速度導波路と量子ドットとの結合を観測することに成功した。低群速度効果による光物質相互作用の増大を確認するとともに、単一光子発生とその伝搬を観測した。また、結合共振器系で発現するトポロジカル境界状態を活用した高出力レーザーについて理論的な検討を深めた。利得・損失の空間配置を最適化することで、目的とする光モードと競合モードとの間に大きな閾値利得差を与えることが可能であることが分かった。3. 極限量子ドット光源開発 :量子ドット-ナノ共振器-導波路結合系をスポットサイズ変換器を介して光ファイバに接続することで、ファイバ出射型の単一光子源を実現した。また、ドイツ・カッセル大との共同研究も行うことで、光通信波長帯で動作するインジウム燐系量子ドットを使ったファイバ出力光源の研究も展開した。昨年度までに見出した導波路中に反射ミラーを設けた構造も導入し、高効率な光ファイバ出射が可能な光源の開発にも取り組んだ。加えて、ブルズアイ構造に埋め込んだGaN量子ドット単一光子源やInGaN量子ドットからの高純度単一光子発生にも成功した。
2: おおむね順調に進展している
量子ドット-ナノ共振器結合系を用いて多くの研究成果を創出するとともに、トポロジーなどの概念を活用した新しい光源構造を提案するなど、想定以上の進展を得ている。しかし、今年度は新型コロナウィルスの影響による研究中断や結晶成長装置における不測のトラブルが発生し、量子ドット-ナノ共振器結合系の作製と評価について遅延が生じた。その結果、予算の繰り越しと短期間ながらも研究の継続を判断するに至っている。以上を勘案して、進捗状況は「② おおむね順調に進展している」と評価した。
令和2年度は研究最終年度であったものの、新型コロナウィルスや結晶成長装置故障などの不測の事態に起因して研究中断期間が発生した。このため、研究期間を延長し令和3年度に本研究プロジェクトを短期間実施する。これにより、研究中断により推進が困難となっていた量子ドット-ナノ共振器結合系の作製や評価を進め、関連する研究の完了とさらなる成果創出を目指す。特に、量子ドット―ナノ共振器―導波路結合系の作製と光学評価、トポロジーの概念を用いた共振器系で発現するレーザー発振およびトポロジカル光波生成といった研究テーマに注力してプロジェクトを推進する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 3件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 6件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
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