研究課題
物質のエネルギー貯蔵機能の観点から、材料科学を実験・分光・理論の複合検討により徹底的に俯瞰再考し、高機能化に向けた指針の提示と具現化を行うとともに、高機能界面を内包するデバイス展開を行った。電極材料における遷移金属の酸化還元反応に制限される貯蔵容量限界を突破し、固体内酸素の酸化還元反応の最大活性化による容量の飛躍的増大にむけて、反応に関わる分子軌道論の学術体系化を行い、電位ヒステリシスを誘引する準安定中間体として、スピン転移状態、酸素間結合状態を同定した。これらを抑制する施策として、規則性欠陥導入による軌道変調と静電的安定化による自己秩序化の有効性を実証した。界面電気二重層形成による電荷貯蔵については、これまで静電容量を支配する①表面積、②誘電率、③二重層厚さ、のうち、専ら①と③に着目した材料設計が行われてきた。これに対し、本来溶媒分子固有の物性値である②誘電率を、運動自由度を奪うことで能動的に制御可能であること、具体的には2次元空間に束縛された水分子が負性電場感受率を示すことを発見し、これが界面実効静電容量を1.7倍に増大させることを見いだした。電荷貯蔵媒体の移動を司る電解液において、溶解させるアルカリ金属塩の高濃度化が配位構造、電子状態、界面形成能の変調を誘引し、多くの電池機能を飛躍的に高めることを発見した。特に水溶液系では、安定電位範囲の4倍以上という顕著な拡大を達成した。さらに、分子の構造的特徴と機能を結びつけた合理的な電解液設計戦略により、リチウムイオン電池の約30年の歴史の中で、炭酸エチレンを大幅に上回る基本性能を発揮する代替溶媒を初めて見だした。高濃度戦略に頼ること無く、高度な安全性と大幅に拡張された電位窓が付与され、コスト・毒性・生産性の問題も少ないため、既に多くの材料、電機、自動車関連企業が強い感心を示しており、多角的かつ総合的連携体制を構築中である。これらの新材料・新界面に関する新たな知見を統合して試作した電池セルは上限電圧5.2V、繰り返し特性1000回以上を達成し、到達可能なエネルギー密度は現リチウムイオン電池の1.3~2.6倍に相当する。研究期間中にNature Energy誌4報、Nature Communication誌5報等による積極的成果発信を通じて高い国際的認知と学術的影響度を獲得していると同時に、今後の高機能材料開発に向けた明確なプロトコルを提供しており、産業界・工学への大きな波及効果も見込まれる。
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すべて 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 13件、 査読あり 17件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (30件) (うち国際学会 13件、 招待講演 18件) 産業財産権 (1件)
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