研究実績の概要 |
本研究の目的は、スピン軌道相互作用を利用してスピントロニクスに軌道という新たな自由度を加えることで、「スピンオービトロニクス」という新しい学理を構築し、革新的デバイスイノベーションへ展開することである。具体的には、以下の研究項目を実施する。 (1) スピン軌道相互作用を利用した物質探索 (2) スピン軌道相互作用を利用した新規スピン操作手法の研究 これまでの主な成果は以下のようである。 (1) “Magnetic Moment Orientation-Dependent Spin Dissipation in Antiferromagnets”, Phys. Rev. Lett. 119, 267204(2017). 本論文は上記研究項目(2)に関するものであり、反強磁性体中でのスピン吸収が反強磁性体のスピン構造に依存することを報告している。逆に考えると、スピン流を反強磁性体に注入することで反強磁性体のスピン構造を制御することが可能なことを示唆している。 (2) “Microscopic Investigation into the Electric Field Effect on Proximity-Induced Magnetism in Pt”, Phys. Rev. Lett. 120, 157203(2018). 本論文は上記研究項目(1)に関するものであり、電圧印加によるPtの磁性制御に成功したことを報告している。X線吸収測定とX線磁気円二色性分光法を併用することで電圧誘起磁性のミクロな起源を明らかにした。 (3) “Fast Domain Wall Motion in the Vicinity of the Angular Momentum Compensation Temperature of Ferrimagnets”, Nature Materials 16, 1187(2017). 本論文は上記研究項目(2)に関する研究の中で見出された現象に関するものである。フェリ磁性体の角運動量補償温度で磁壁の移動速度が急増することを見出し、この現象がフェリ磁性体における反強磁性的スピンダイナミクスによることを明らかにした。
|