研究課題/領域番号 |
15H05705
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
遠藤 斗志也 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (70152014)
|
研究分担者 |
田村 康 山形大学, 理学部, 准教授 (50631876)
|
研究期間 (年度) |
2015 – 2019
|
キーワード | ミトコンドリア / TOM複合体 / Tom40 / タンパク質輸送 / 脂質輸送 / Upsタンパク質 / ERMES |
研究実績の概要 |
本研究では, サイトゾルからミトコンドリアへのタンパク質の輸送, および膜間の脂質の輸送を中心に, ミトコンドリアが細胞内でいかに作られるかという根源的問題の分子機構を統合的に理解することをめざしている。 まずタンパク質の交通については, 1000種類以上のミトコンドリアタンパク質の入り口として機能する「タンパク質専用の外膜透過装置」TOM複合体について, 構成タンパク質がどのように集合して複合体をつくり, どのように前駆体タンパク質を効率よく膜透過させるかについて, 計算科学による構造予測と部位特異的光架橋法を組み合わせて解析を行った。複合体の中心因子Tom40がつくる円筒構造の内側は, 前駆体タンパク質が外膜を透過するための通り道として機能し, 異なるタイプの前駆体ごとに, 別々に最適化された通り道が用意されていた。Tom40のN末端領域は円筒構造内を貫通して膜間部側でシャペロンタンパク質を集め, 疎水性前駆体を効率良く受け渡していた。さらにTOM複合体にはTom40から成る孔が3つの完成型と, 孔が2つの準備型の2つの状態があり, それらを可逆的に変換することで新しいTom40を古いTom40と入れ替え, 完全な機能をもつ複合体を維持していることが示唆された。 脂質の交通については, ミトコンドリアの外膜から内膜に脂質を輸送するUpsタンパク質・(Ups1, Ups2)に関して, 構造解析(Ups1)とin vitroでの脂質輸送解析(Ups1, Ups2)を行うとともに, 酵母細胞から単離したミトコンドリア-ER膜画分を用いて, in vitroでERからミトコンドリアへのホスファチジルセリン(PS)輸送とミトコンドリアからERへのホスファチジルエタノールアミン(PE)輸送をモニターするアッセイ系を確立。この系を用いてミトコンドリア-ER間コンタクトを形成するERMESがPS輸送には関わるがPE輸送には関わらないことを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンパク質輸送については, TOM複合体のアセンブリー構造の解析が完了したので, これにもとづきラテラルリリースの機構解析を進めている。PINK1や0m45誘導体を含めた基質の検討, Tom40チャネルのラテラル開閉を点変異導入したCys間の架橋で阻害する条件検討を進め, 順調に成果があがっている。酵母細胞へPINK1-Parkinシステムを導入したシステムを使って, PINK1-Parkin発現による細胞の増殖阻害を強める, あるいは弱める低分子化合物のスクリーニングを行っている。スクリーニングは順調に進んでおり, 候補化合物が得られている。ノンストップ(NS)タンパク質のミトコンドリア膜, ER膜上での品質管理について, サイトゾルのユビキチンリガーゼLtn1の有無の影響の解析を行い, 順調に結果が出ている(一部投稿中)。 脂質輸送については, ER-ミトコンドリア間の脂質(PSとPE)の輸送をモニターできるin vitroアッセイ系の確立に成功し, 現在投稿中である。この系を用いて, ERMESがER-ミトコンドリア間のPS輸送に関わる事を直接証明することに成功した(投稿中)。またミトコンドリアの外膜と内膜の間でホスファチジン酸(PA)を輸送するUps1-Mdm35についてX線構造を決定し, 脂質輸送の分子機構を解明した。Ups2についても脂質輸送能をin vitroで証明し(九州大学久下理教授との共同研究), 順調に成果があがっている。
|
今後の研究の推進方策 |
まだ研究を開始して1年が経過していない段階であるが, 特に問題は生じていない。脂質解析用の質量分析計をはじめとする設備機器を導入し, 使用を開始している。研究代表者のグループでは研究員4名(エフォート管理による), 研究補助員2名, 研究分担者のグループでは研究員1名の雇用も開始し, 順調に研究が始まっている。 今後の研究計画は以下の通り。 ・外膜トランスロケータのラテラルゲート開閉に関する変異体作成Tom40とTom22, Tom40とTom7の相互作用部位の点変異体を作製し, TOM40複合体のアセンブリー, 基質のラテラルリリースへの影響を調べ, Tom40チャネルのラテラルゲート開閉の機構を明らかにする。 ・内膜トランスロケータから内膜へのラテラルな組込みについて, 開閉部位をCys間架橋で閉じることを試みる。 ・酵母細胞へのPINK1・Parkinシステムの移植とその利用について, すでに得られつつある低分子化合物のスクリーニングを進める。 ・NSタンパク質へのユビキチン付加による膜透過チャネル占有の阻害が起こるかどうかを検討する。 ・ERMESによるER-ミトコンドリア間脂質輸送機構について, 特にサブユニット間相互作用部位の特定, そこへの変異導入を試みる。 ・ミトコンドリアと他のオルガネラ間接合部位の探索を進める。 ・ERMESクラスタリングの意義と調節について研究を進める。 ・確立した脂質輸送のin vivo解析系を利用して, 脂質輸送に関わる因子の機能解析を進めるとともに, in vivoで膜間脂質の輸送をモニタリングする系の開発を行う。
|