研究課題
海洋酸性化と地球温暖化の影響を世界で最も深刻に受けている西部北極域において、海洋生態系の底辺を支える動植物プランクトンに着目し、その1)脆弱性;2)頑健性;3)特異性を明らかにすることを目的とした。最終年度であり、開発システムの完成や論文投稿など取りまとめの活動を行ってきた。具体的には、1)脆弱性に関して、特許を含めて独自開発してきたマイクロX線コンピュータトモグラフィ法(MXCT)を用いて浮遊性有孔虫等の炭酸塩殻の密度を測定し、現場の酸性化の影響を定量的に評価し、最大で約40%もの炭酸塩骨格密度が減少することを見出した。この結果を論文として公表した。さらに、チュクチ海では北極海特有の底生-遠洋性の生態系が保たれているが、中央部カナダ海盆では既に北極海特有の生態系は失われ、遠洋性生態系に変化しつつあり、この点に関しても論文として公表することができた。2)頑健性に関して、熱帯や亜熱帯域特有と考えられていた窒素固定による基礎生産が北極海においても営まれていること、遺伝子解析の結果、北極海特有の非光合成生物が窒素固定を担っていることを明らかにし、これに関しても論文として公表することができた。3)特異性に関して、北極海で採取した炭素数10から38の一連の直鎖飽和炭化水素(alkane)を合成する能力を持つ植物プランクトン株を発見し、遺伝子配列解析の結果、植物プランクトンDicrateria rotunda種と同定した。この種がどういう条件で効率よくalkaneを合成するのか、温度や栄養塩環境など条件を変えた培養実験を実施した。その結果、窒素栄養を欠乏させた実験系で単位細胞あたりもっとも多量のalkaneを合成することがわかった。この結果は現在、論文として投稿中である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 4件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 7件)
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