研究課題/領域番号 |
15H05713
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤堂 剛 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90163948)
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研究分担者 |
辻村 亨 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20227408)
弓場 俊輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40263248)
瀬々 潤 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究チーム長 (40361539)
川崎 隆史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (60356839)
藤原 智子 (石川智子) 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70402922)
吉村 崇 大阪大学, ラジオアイソトープ総合センター, 教授 (90323336)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | 損傷応答 / ゲノム編集 / 突然変異 / メダカ |
研究実績の概要 |
我々のゲノムDNAは、常に、外的・内的要因によるDNA損傷の脅威に曝されている。DNA損傷は「ゲノム不安定性」を誘発し、やがて長い潜伏期間の後、発がん等重篤な疾患を引き起こす。損傷応答機構は、多様なDNA損傷に対抗する重要な生体防御機構であり、「ゲノム安定」維持に本質的な役割を果たしている。損傷応答研究は、生存率や特定の応答経路への作用を細胞レベルで解析するのがこれまでの常套手段であり、突然変異をそのエンドポイントとする研究はごく少なく、しかもほとんどの場合特定遺伝子におこる変異を検出する系が用いられ、ゲノムレベルでの解析はほとんどされていなかった。本申請研究では、ゲノム変異(点突然変異及び染色体レベルでの構造変化)をエンドポイントとして内因性変異因子や環境変異原に対する細胞の損傷応答機構を明らかにする研究を提案している。本年度は以下の研究成果を得た。 1)平成27-28年度において作製・樹立したrev3遺伝子メダカ変異体の寿命が極めて短く(生後9ヶ月で死亡),この原因が全ての個体で大腸がんが発症する為である事を見いだした。詳細な病理学的解析を行うとともに、rev3変異体から樹立した培養細胞を用い細胞レベルでの解析を行い、大腸がんが発症のメカニズム解析を行った。 2)平成27-28年度において、次世代DNAシークエンサー(NGS)を活用した、ゲノム変異解析系を樹立してきた。この解析系を用いrev1遺伝子メダカ変異体において,DNA損傷によりLOHが高頻度に誘発される事を見いだした。 3)組織幹細胞可視化系統の作出を行った。Bmi1, SOX2, CD9, Fabp10a各遺伝子についてGFPマーキング系を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の格子は,1)損傷応答機構解析系の確立、2)ゲノム変異解析系の確立,3)体組織レベルでの解析系の確立,の3点からなる。 1)に関しては、TALEN, CRISPRのゲノム編集技術によりrev3を含むTLSポリメラーゼや損傷応答制御に関する遺伝子のメダカ変異体を既に作製し,その表現型解析が順調に進んでいる。 2)に関しては、NGSによるゲノム変異解析ツールを確立し、これを用いた解析結果からDNA損傷誘発によるゲノム変異について新たな知見が得られつつある。 3)に関しては、幾つかの可視化系統を既に確立している。 この様に、当初計画は順調に進められている。これに加え、rev3変異体において、年齢依存的に浸透率100%で大腸がんが発症する事を見いだした。ヒト大腸がんの発症要因については、ミスマッチ修復欠損等によるゲノム内点突然変異(Point Mutation:PM)増大が要因となる事が知られているが、これ等はヒト大腸がんの10%程度であり、大部分を占める残りのゲノム変異は染色体レベルでの異常(Chromosomal Instability:CIN)であると考えられている。本メダカrev3系統を用いたゲノム解析系は、PMとCINの大腸がんにおける寄与の解析に最適の系であり、発がんにおけるゲノム不安定性の関連を明確に証明でき,そのメカアニズム解析に迫る展開が期待できるる。本研究推進により、当初予定を超えた成果が得られるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27-29年度の成果の基づき,平成30年度においては以下の方針で研究を進める。 1)NGSを用いたゲノム解析系を確立し,培養細胞レベルでの解析系から多くの新たな知見が得られつつある。この解析を更に押し進め,ゲノム変異誘発に関与する遺伝子の機能からメカニズム解析を進める。これに加え、本解析法を体組織における解析に適用する事を試みる。 2)既に、体組織幹細胞可視化系統をいくつか作製しており、これ等の系統を用い体組織細胞の分取技術の確立を行う。また同時に、更に新たな体組織幹細胞可視化系統の樹立を行う。 3)rev3 変異体の大腸がん細胞のゲノム解析を行う。
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