研究課題
本研究は、紀伊半島沖熊野灘プレート境界断層上盤の応力場、主応力と間隙水圧、プレート境界断層の摩擦強度を解明し、それらを総合して地震・津波発生切迫度を定量的に評価することを目的としている。第3年度の本年度は、以下の研究実績を挙げた。1.第2年度に再解析された3次元地震反射データとこれまでの掘削によって得られたデータをまとめ、プレート境界上盤と境界断層の岩相、物性、応力場、間隙水圧を推定した。地震発生プレート境界断層の上盤側にこれまで予想されたものより高速度の地質体が存在することが明確となった。それらのデータと推定を基に平成28年度実施予定の深部掘削の科学的・技術的準備をすすめた。2.また、昨年度から得られはじめた掘削孔内観測の分析を進め、世界初の観測結果を公表した。特にゆっくり滑り前後の孔内圧力変動を地質体全体の体積収縮に帰着させることに成功した研究は世界初であった。3.10月より実施された第380次航海を分担者が首席として主導した。掘削孔内観測網と海底観測網への接続完備を完了し、連続観測体制に入った。観測データの公開体制をとることも実施機関によって予定されている。4.IODP第380次航海と合わせてコア検層地震波観測統合研究教育プログラムを実施した。付加体先端部の保存コア試料分析、検層データ、地震データ再統合のための国際教育研究プロジェクトを研究代表者・分担者が主導した。結果として付加体先端部における未解決課題の整理を行い、南海掘削時の追加掘削プラン作成へつなげた。また、ゆっくり滑り、高速津波発生の断層過程の違いを明らかにした。
3: やや遅れている
1.2016(平成28)年4月1日に発生した、70年ぶりの南海トラフプレート境界地震を検出したことは大きな成果であり、成果を論文として公表した。この地震に伴う微弱な圧力増加が孔内観測装置の圧力計によって検出され、それが地震に伴うプレート境界断層上盤側を構成する付加体堆積層の体積縮小によるものであることが明らかとなった。また、その変動が繰り返し起こっていることが回収したデータから明らかとなった。巨大地震と日常的に繰り返し発生するスロー地震との関連を解明する上で重要な観測結果が得られている。それらについても論文として公開、Science誌に掲載された。2.第2年度に再解析された3次元地震反射データとこれまでの掘削によって得られたデータをまとめ、プレート境界上盤と境界断層の岩相、物性、応力場、間隙水圧を推定し、公表の準備を進めた。それらのデータを基に平成30年度実施予定の深部掘削の科学的・技術的準備をすすめた。3.2017(平成29)年度10月より実施された第380次航海を分担者が首席として主導した。掘削孔内観測網と海底観測網への接続完備を完了し、連続観測体制に入った。観測データの公開体制をとることも実施機関によって予定されている。4.IODP第380次航海と合わせてコア検層地震波観測統合研究教育プログラムを本研究代表者によって実施した。付加体先端部の保存コア試料分析、検層データ、地震データ再統合国際プロジェクトを主導した。結果としてレガシーサンプルに新たな分析を加えて、付加体先端部における津波発生高速滑りとゆっくり滑りの重複した微細構造の発見へと繋がった。更に、IODP第158次航海の南海掘削に際しての追加補充掘削プラン作成へとつなげた。5.以上の成果を着実に挙げつつも、平成29年度に開始予定であった超深度ライザー掘削が掘削実施主体(海洋研究開発機構)の主に財政事情で1年延期となり、それに付随する研究計画に遅れを生じることとなった。
平成30年度は、10月から翌年3月まで5ヶ月半をかけて、地球深部探査船「ちきゅう」によって海底(水深約2,000m)下、約5,200mに推定されている南海トラフプレート境界断層の上盤と断層を目標として掘削を実施する予定であり、本研究の研究分担者、協力者がその中心となって実施する。1.船上において、孔内検層・計測、掘削泥水漏洩観測、掘削コア試料擬弾性変形、および鉛直地震探査に基づいて、プレート境界断層上盤側の現在の応力場・主応力、および間隙水圧を定量し、プレート境界断層に作用する剪断応力と有効垂直応力(=垂直応力-間隙水圧)を求める。回収されたカッティングス(掘削による岩片)の船上分析によって、上盤プレートを構成する地質、年代、物性、化学的特徴を明らかにする。掘削コア試料のX線CT画像処理によって断層の内部構造、物性を明らかにする。2.掘削航海終了後、令和元年度7月までに、回収された断層およびその上盤、下盤の岩石試料を用いて、摩擦特性、水理特性を決める。3.平成29年度設置に成功した付加体先端部、南海トラフ直近の孔内観測装置(掘削地点C0006)によるスロー地震の震源把握精度を向上させるため、三次元地震反射データ再解析地域を平成30年度に拡大する。4.最終年度の平成31年度は、平成30年度のデータおよび試料の解析・分析を実施し、本研究のまとめを行う。本研究によって得られた成果を総合し、南海トラフに予想されている巨大地震の切迫度の定量的評価を探り、本研究の目的を達成する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (26件) (うち国際共著 5件、 査読あり 24件、 オープンアクセス 18件) 学会発表 (110件) (うち国際学会 89件、 招待講演 9件)
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