研究課題
本年度は最終年度にふさわしく、これまでの研究を統括する重要な成果が得られた。まず、低被ばく多色X線CTに関しては、64chを同時に測定する新規システムを構築した (Maruhashi et al.2020)。光センサーであるMPPCは信号レートが高い状況で発熱し、ゲインが低下する問題があった。本年度は熱特性に優れたセラミックMPPCアレイおよび高速シンチレータを新規に開発し、耐レート特性の向上とCT画像CNR(contrast to noise ratio)の大幅な改善を確認した。さらに、抗がん剤として着目される金ナノ粒子(Au-NP)と造影剤(ヨード・ガドリニウム)の同時撮影に成功し、CT装置を薬剤動態モニターとして使う新たな可能性を示した。続いて核医学治療(塩化ラジウムを用いたアルファ線内用療法)では、阪大病院において前立腺がん患者2名を対象にコンプトンカメラによる臨床試験を実施した。本年度は人体撮影を目的とした10×10cm^2の大型カメラを新規に製作し、10分間の撮影で体の広範囲の薬剤分布を精確に可視化することに成功した。コンプトンカメラの核医学治療への応用としては世界初の成果となる (Fujieda et al. 2020)。最後に、ガンマ線可視化技術の要望は粒子線治療分野でも次第に高まりつつある。本研究では、次世代陽子線治療である陽子ホウ素捕獲療法(pBCT)について、その実現性についても検討した。具体的には、p+11^B → 3α反応、および関連するアルファ線生成反応が起こす線量への寄与について、CCD カメラによる可視化とゲルマニウム半導体を用いた詳細スペクトル測定、さらに核反応断面積の導出に挑戦した。シミュレーションや理論計算のみで実施されてきたpBCT に初めて実験的なメスを入れる画期的な検証を行うことができた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 11件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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