研究課題/領域番号 |
15H05724
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小川 園子 筑波大学, 人間系, 教授 (50396610)
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研究分担者 |
Pavlides C 筑波大学, 人間系, 教授 (50712808)
高橋 阿貴 筑波大学, 人間系, 助教 (30581764)
塚原 伸治 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (90318824)
坂本 浩隆 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (20363971)
小出 剛 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 准教授 (20221955)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | エストロゲン受容体アルファ / 社会行動神経回路 / ステロイドホルモン / 思春期 / 性特異的行動 / エストロゲン受容体ベータ / 攻撃行動 / 養育行動 |
研究実績の概要 |
(1)ERβ発現細胞をin vivoで可視化するため、ERβ BACプロモーターの下流に赤色蛍光タンパク質(RFP) 遺伝子をつないだBAC tg レポーターマウス、ERβ-RFPtgを作製した。その結果、卵巣の顆粒細胞に強いRFPシグナルがみられ、脳内では室傍核(PVN)に強いRFPシグナルが認められた。しかしながら、ERβ発現が報告されているその他の神経核でのRFPシグナルは微弱であった。そこで、RFP抗体を用いてRFPシグナルを増強したところ、文献的にERβ mRNAの発現が報告されている多くの神経核、i.e., PVN,MeA,背側縫線核(DRN)にRFP陽性反応が認められた。さらに、下記の通りRFP標識がERβに限局されることを確かめ、ERβ-RFPtgマウスの妥当性、有効性を確立した。 (2)これまで我々が用いてきたsiRNA-AAV法は、ERαあるいはERβの遺伝子発現を特定の脳部位においてのみKDするためには極めて有効であったが、遺伝子発現のKDが不可逆的であるという問題があった。そこで、発達の特定の時期、特に思春期での性ステロイドホルモンの作用におけるERαあるいはERβの役割を検討するために、「時期特異的なKD」の手法を確立することを目指した。具体的には、AddgeneのPlasmid#82706をベクターとして用い、ERαまたはERβに相補的な配列を有したshRNAの発現をTet Onシステムを用いて制御することを試みた。U6プロモーターの下流にshRNA配列を導入したAAVを作製し、成体マウス脳内(視床下部腹内側核)に局所投与したところ、ドキシサイクリン(DOX)非存在下での内在性ERα発現には影響することなく、DOX存在下でのみERαの発現を可逆的に消失させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)新規に立ち上げた解析手法についてその有効性が十分に検証され、社会行動を司る神経ネットワークにおけるERαおよびERβの役割を解析するための基礎データを集積することができた。したがって、当初設定した目標の各々について、順調に研究が進展していると言える。現時点では、その多くについては、未だ原著論文としての発表にはこぎつけていないものの、今後の研究により、最終的には十分な成果が見込まれると考えている。 (2)信頼性の高い抗体が存在しないことから、世界的に見ても解析が十分に進んでいなかったERβについて、今後の解析に必要不可欠なマウスモデルが確立できた。我々も、何度か試みたにもかかわらず抗体の作製には未だ成功していないものの、我々の作製したERβ-RFPtgマウスについては、ERβ発現の解析に十分使用できることが確かめられた。 (3)性ステロイドホルモンの形成作用の解析には必須である、可逆的な脳部位特異的な遺伝子発現操作法を確立できた。DOXの有無により、ERαあるいはERβの発現を操作出来るこの方法を用いることにより、性に特徴的な脳機能や構造の形成に果たす思春期の役割の解析が大きく進展するものと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマ1 性ステロイドホルモンの「活性作用」による社会行動神経ネットワーク機能制御:雄の性行動と攻撃行動を中心に、各々の神経ネットワーク(扁桃体、分界条床核、内側視索前野、背側縫線核他) に局在するERαとERβの役割分担とその脳内作用機序の理解に向けた解析を進める。 サブテーマ2 性ステロイドホルモンの「形成作用」による社会行動神経ネットワークの構築:可逆的にERαあるいはERβの発現をノックダウンする手法を用いて、発達途上での性ステロイドホルモンの形成作用による社会行動神経ネットワークの構築と成長後の社会行動表出におけるERαとERβの役割とその分子神経組織基盤の解析を進める。 サブテーマ3 雌に特有な社会行動の発現調節における性ステロイドホルモン受容体の役割:サブテーマ1と同様の手法を用いて、引き続き、雌の性行動、出産後の養育、攻撃行動の表出制御におけるERαとERβの役割分担の解析を進め、雌に特有な社会行動の神経ネットワークの機能の神経組織基盤の解明 に繋げる。 サブテーマ4 社会性行動の個体差の要因となる内分泌関連遺伝子の多型プロファイルの解析 :N末端領域に3アミノ酸の挿入変異と遺伝子イントロン内にスプライシング多型をもたらすレトロウィルス様因子の挿入というERαの関する2種の多型の各々について、社会行動解析実験を進める。また、性線切除、ホルモン処置の効果についても分析する。
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