研究課題/領域番号 |
15H05726
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
和田 肇 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (30158703)
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研究分担者 |
矢野 昌浩 龍谷大学, 法学部, 教授 (50253943)
緒方 桂子 広島大学, 法務研究科, 教授 (70335834)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | 日韓比較労働法研究 / 非正規雇用 / 均等処遇 / 雇用社会の変動 / 標準的労働関係 |
研究実績の概要 |
研究の最初の年度であるが、以下の柱に沿って順調に研究実績を上げた。 非正規雇用の雇用問題が深刻化し、多くの裁判が提起されている。この年度の研究は、こうした問題に取り組んでいる弁護士や実務家とコラボしながら、共同研究を行った。そのうちのいくつかは鑑定意見書の執筆につながっている。 外国法研究が旺盛に展開された。定期的に行われてきた日韓労働法フォーラムが、「労働法の規制緩和と規制改革」をテーマとして開催された。そこでは1990年代以降における両国の規制緩和政策と現政権で進められている労働法改革であり、両国の状況の類似性と相違性に関心が集中したが、いずれも雇用社会の危機という状況にあり、労働法の課題が明らかにされた。韓国女性研究員と韓国国会議員団の共同開催で、「雇用におけるハラスメントの法的問題」をテーマとしたシンポジウムが開催され、和田が招待講演を行っている。日本台湾比較労働法研究が開始され、今日的課題をテーマとするシンポジウムを開いた。また、日独比較労働法研究が、和田とボン大学のWaltermann教授との共同で開始され、Waltermannを招聘し、ドイツの法定最低賃金制度について、日独比較研究を行った。また、2回公開シンポジウムを開催している。 和田と共同研究者の西谷敏の2冊の著書の出版準備が行われた(なお、出版は2016年5月と6月である)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下のような成果を上げた。とりわけシンポジウムを開催するだけでなく、その成果を雑誌において公表し、社会還元ができた。 ①労働法理論研究会:年5回開催(2015年4月8日、6月10日、8月21日~22日、12月12日、2016年2月13日、参加者は25~30名)。この研究会では、非正規雇用(パートタイム、有期雇用、労働者派遣)に関する裁判例、外国法(韓国法)、公務員法に関する研究が中心に検討された。 ②日韓比較労働法研究:第9回日韓労働法フォーラムが、「労働法の規制緩和と規制改革」をテーマとして、2015年12月18日~19日に金沢大学を中心に開催された(参加者は韓国13名、日本18名であった)。成果は、労働法律旬報1865号に掲載されている。同年5月12日に「雇用におけるハラスメントの法的問題」をテーマとして韓国国会議員会館内でシンポジウムが開かれている(公開シンポで参加者は約100名であった)。成果は、労働法律旬報1858号に掲載されている。 ③日本台湾比較労働法研究:2015年9月4日~5日に名古屋大学で開催された(参加者は台湾側12名、日本側24名であった)。成果は労働法律旬報1860号に掲載されている。 ④日独比較労働法研究:ドイツ・ボン大学のWaltermann教授を招聘し、2015年11月16日に日本弁護士会館で、18日に大阪弁護士会会館でセミナーを開催している(参加者は、各140名、80名であった)。成果は、労働法律旬報1859号に掲載されている。 ⑤こうした国際共同研究とともに、共同研究参加者が旺盛に論文を執筆している。
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今後の研究の推進方策 |
①国際共同研究を推進する。日韓比較労働法研究については、第10回労働法フォーラム(テーマとして考えているのは労働者派遣法の比較法研究)その他の比較法シンポを開催する。日本台湾比較労働法研究については、第2回フォーラムを台湾で開催する(テーマとして考えているのは事業組織の再編と労働法)。日独比較労働法研究については、「高齢化社会における持続可能な労働法・社会保障法」をテーマとして、ボン大学でシンポジウムを開催する。和田とWaltermann教授との共同研究を発展させて行く。 ②和田(「労働法の復権」日本評論社)と西谷敏(「労働法の基礎構造」法律文化社)の著書が出版される運びとなっている。前者は、今日の雇用状況の崩壊現象の中で労働法の復権・再構築を目指すものであり、後者は、戦後労働法の再検討と将来展望につながる理論書である。これらの書評会とともに、若手研究者の意欲的な作品についての書評会を開催したい。 ③引き続き非正規雇用(有期雇用、パート雇用、労働者派遣、官製ワーキングプア)問題とその法的対応、あるいはその限界と新たな立法構想の分析を行う。できたら学会での報告を計画したい。 この年度は研究2年度目であり、国際共同研究を対象範囲を広げていきたいとも考えている。
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