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2018 年度 実績報告書

雇用社会の持続可能性と労働法のパラダイム転換

研究課題

研究課題/領域番号 15H05726
研究機関名古屋大学

研究代表者

和田 肇  名古屋大学, 法学研究科, 教授 (30158703)

研究分担者 矢野 昌浩  名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50253943)
緒方 桂子  南山大学, 法学部, 教授 (70335834)
研究期間 (年度) 2015-05-29 – 2020-03-31
キーワード労働法 / 社会保障法 / 持続可能性 / 日独共同研究 / 日韓共同研究
研究実績の概要

2017年度から研究の柱に「労働法と社会保障法の連携および持続可能性」を据えた研究を行ってきた。2017年2月にドイツでこのテーマでシンポジウムを開催し、その成果が要約図書としてドイツで出版された。昨年度は、これを基にして、日本法の論考の加筆・修正を行った。また、ドイツからWalterman教授を招聘し、ハルツ改革以降の労働法と社会保障法の課題について、Seifert氏らを招聘し、労働時間法改革についてのセミナーを行った。
日韓労働法共同研究が進展している。日本ではアベノミクスの働き方改革が、韓国では文政権の新たな労働法改革が進んでおり、以前の朴政権との比較も踏まえながら、改革法の分析を行った。日本からの報告などは、アベノミクスの改革法の限界や課題を指摘する者が多かった。
日本と台湾の共同研究の再開として、和田が台湾に招待され、労働法改革についてのセミナーを行った。そこで今後の共同研究の進め方が再確認された。日本法研究は、労働法理論研究会を中心に進められたが、昨年度は、最高裁判決が相次いだり、新たに多くの訴訟が提起されたこともあり、非正規雇用と均等処遇、不合理が差別禁止の検討が中心となった。この検討には、多くの実務家が参加しており、また裁判の意見書等もこの研究会を通じて出されている。非正規雇用問題は、先進国の共通の課題となっている。
和田を中心に、立法政策論の研究が進められている。これは、現在進められようとしている各種の労働立法政策が、その目的を達しているかという視点から分析し、改革の方向性を模索するものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

労働法の基礎理論についての著書1冊、日本の労働法と雇用社会の現状と課題、今後の在り方についての著書がそれぞれ1冊、これらの韓国語訳、ドイツ労働法の研究書2冊、労働者派遣法に関する著書1冊、日独労働法共同研究に関する著書1冊が出版され、これについての書評が相当数出されるなど、研究の成果について高く評価されている。労働法と社会保障法の持続可能性について、それをまとめた日独共同研究書が出版された。この中では、労働法と社会保障法の連続性と持続可能性の分析が行われている。昨年度は研究論文が、約50本出されている。後述の業績については、科研費での研究であることを明記しているものに限定している。
国際共同研究としては、日韓についてこの10数年間行ってきた国際シンポが開催された。特に昨年度は、文政権下での労働改革分析が、それを実際に担っている研究者から行われている。日独共同研究についても、幾人かの研究者と労働法改革の現状と課題についての日独の共通性と異別性を意識した報告がなされている。これらすべて雑誌で(外国文献は翻訳で)公刊されている。また、セミナーはすべて公開で実施されている。ただし、日本と台湾の共同研究は再開されたが、若干遅れている。
なお、国際共同研究の新たな展開として、本研究グループの何人かが韓国での在外研究を遂行し、日本側からの研究水準が高まってきている。日本での韓国労働法研究者は、すべてこの共同研究に属している。
日本法の分析としては、非正規雇用裁判の分析・検討、意見書の執筆、判例研究等が進展した。これは弁護士も含めた共同研究である。労働時間法についても、生活主権の確保という視角からの分析が行われた。これには日独共同研究の成果も大きく貢献している。

今後の研究の推進方策

研究の最終年度であるので、全体のまとめの研究を行う。2020年1月を目途に、これまでの研究のいくつかの論考をまとめて、「労働法と社会保障法の持続可能性」として公刊する。また、2015年以降に行ってきた「日韓・韓日比較労働法シンポ」の既発表論文をまとめ、2019年11月に『日韓比較労働法3・韓国労働法の展開』を公刊することを予定している。
国際共同研究として、第14回日韓比較労働法シンポ(テーマは「最近の労働時間法改革」)を本年9月に韓国の済州大学で開催する。本年12月に、関西学院大学の横田伸子教授の科研費及び韓国労働研究院との共催で、「日韓非正規労働フォーラム」を龍谷大学で開催予定である。このシンポは、法学の枠を超え、経済学や社会学にも及ぶ学際研究でもある。韓国側からは、文政権下での新たな非正規雇用政策についての報告が行われる。日独の国際共同研究として、本年9月~10月にドイツ・ボッフム大学のWank名誉教授を招いて、「有期・パート法の新たな動向」をテーマとした共同研究を、同11月にドイツWSI元所長(現研究員)のSeifert氏を招いて、「働き方の日独比較」(仮) というテーマで市民向け公開セミナーを東京、名古屋、京都で開催する。2020年1月には、ドイツ・ボン大学のWaltermann教授らを招き、「多様な働き方と労働者概念」(仮) を名古屋大学で開催する予定である。本年10月~11月に、台湾から研究者(林良栄・国立政治大学准教授ら)を招き、シンポジウム「日本・台湾の働き方改革と労働時間法」を名古屋で開催する予定で、準備を進めている。これまでと同様に、研究の大きな柱として、国際共同研究を位置づけている。そのテーマは、雇用社会と労働法・社会保障法の持続可能性である。
定例の労働法理論研究会を4~5回開催する。この研究会を通じて、2019年1月の研究成果公表への準備をする。

  • 研究成果

    (27件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (19件) (うち査読あり 10件) 図書 (1件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (3件)

  • [国際共同研究] 韓国比較労働法学会(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      韓国比較労働法学会
  • [国際共同研究] ボン大学法学部民法・労働法・社会法研究所(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      ボン大学法学部民法・労働法・社会法研究所
  • [国際共同研究] 台湾 国立政治大学法学院労働法・社会法センター(その他の国・地域)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      台湾 国立政治大学法学院労働法・社会法センター
  • [雑誌論文] 労働時間法制改革に向けた日本の議論2019

    • 著者名/発表者名
      毛塚勝利
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1933号 ページ: 29-36

  • [雑誌論文] 特集・日独における現代的な労働時間法制の構想・解題2019

    • 著者名/発表者名
      緒方桂子
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1933 ページ: 6-11

  • [雑誌論文] 規制された柔軟性:ドイツにおける柔軟な労働時間の規制構造2019

    • 著者名/発表者名
      ハルトムート・ザオフェルト(橋本陽子訳)
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1933 ページ: 12-19

  • [雑誌論文] 人生における時間のニーズの変化に対応するための選択的労働時間制度2019

    • 著者名/発表者名
      キリスティーナ・クレナー(緒方桂子訳)
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1933 ページ: 20-28

  • [雑誌論文] 文在寅政権における労働法改革の方向と構造2019

    • 著者名/発表者名
      趙淋永(脇田滋訳)
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1932 ページ: 27-34

  • [雑誌論文] 文在寅政権における労働法改革の状況2019

    • 著者名/発表者名
      都在亨(徐侖希訳)
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1932 ページ: 35-42

  • [雑誌論文] 年次有給休暇の法政策の検証2018

    • 著者名/発表者名
      和田肇
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1924 ページ: 28-42

  • [雑誌論文] パートタイム労働者の均衡・均等法政策の検証2018

    • 著者名/発表者名
      和田肇
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1922 ページ: 46-61

  • [雑誌論文] 労働政策立法学の構想2018

    • 著者名/発表者名
      和田肇
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1920 ページ: 46-55

  • [雑誌論文] 『働き方改革法案』の評価2018

    • 著者名/発表者名
      和田肇
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 762 ページ: 12-16

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 高度プロフェッショナル制度は働き方改革なのか?ー時間に拘束されない働き方とは2018

    • 著者名/発表者名
      浜村彰
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 762 ページ: 17-22

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 時間外労働の上限規制で過労死はなくなるか?2018

    • 著者名/発表者名
      森岡孝二
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 762 ページ: 23-27

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 『働き方改革』と非正規労働法制の展望2018

    • 著者名/発表者名
      緒方桂子
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 762 ページ: 28-32

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 雇用によらない働き方は、人間を幸福にするか?2018

    • 著者名/発表者名
      矢野昌浩
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 762 ページ: 33-37

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 裁量労働制の提案はなぜ失敗したのか2018

    • 著者名/発表者名
      塩見卓也
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 762 ページ: 38-43

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 日本の雇用における性差別禁止法の現状と課題2018

    • 著者名/発表者名
      相澤美智子
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1911 ページ: 7-14

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 韓国における「男女雇用平等法」の30年の成果と課題ー積極的雇用改善措置を中心に2018

    • 著者名/発表者名
      朴宣映
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1911 ページ: 15-23

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 韓国の男女平等法ー性別等による差別の禁止と職場内ハラスメントの禁止を中心に2018

    • 著者名/発表者名
      沈載珍(徐侖希訳)
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1911 ページ: 24-33

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 日本における働く女性が直面する「労働とケアの両立」をめぐる諸問題-「労働に適した身体」であることへの過剰な傾斜と「個人の選択」化するケア2018

    • 著者名/発表者名
      緒方桂子
    • 雑誌名

      労働法律旬報

      巻: 1911 ページ: 34-50

    • 査読あり
  • [図書] Nachhaltiges Arbeits- und Sozialrecht in der alternden Gesellschaft in Japan und Deutschland2018

    • 著者名/発表者名
      Hajime Wada , Raimund Waltermann(Hrsg)
    • 総ページ数
      185
    • 出版者
      Peter Lang-Verlag
    • ISBN
      978-3-631-76069-7
  • [備考] 持続可能性と法研究プロジェクト

    • URL

      http://slrp.law.nagoya-u.ac.jp/

  • [学会・シンポジウム開催] 日韓労働法シンポジウム・最近の労働法改革の動向2018

  • [学会・シンポジウム開催] 日独労働法シンポジウム・日独における現代的な労働時間法制の構想2018

  • [学会・シンポジウム開催] 日独比較労働法セミナー・ドイツのハルツ改革が労働法・社会保障法に与えた影響2018

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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