研究課題
研究実施計画で三つテーマのそれぞれについて、以下のように研究を進めた。[テーマ1(長期不況の理論的枠組みの構築)] 家計の資産選好を小国開放貨幣経済の動学モデルに組み込み、非常に簡潔な有効需要分析を構築した。この分析は、本研究においてすでに示した閉鎖体系での有効需要分析との整合性が非常に高い。デフレ・ギャップを決める自国製品への総需要は、国内総需要から対外利子配当収入を差し引いた値になる。この修正を加えれば、閉鎖体系のもとでの新しい消費関数はそのまま成立し、閉鎖経済体系での政策分析も小国開放体系に適用できる。そのため、開放経済においても雇用を作る財政支出が重要であることが分かった。さらに、本長期不況理論を日本経済の現状分析に応用し、日本のデータを使いながら、日本経済が抱える諸問題の解明と政策分析を行った。[テーマ2(アンケート調査・実験)] 個人の時間選好を評価する際、目先の利益が遠い先の利益よりも大きく見えてしまう傾向である双曲割引を許す(β,δ)モデルのパラメターを、アンケート調査における複数の質問の回答を組み合わせ、それぞれ導出し、東日本大震災の津波被害を受けた地域の人々の間で、震災後にこの双曲割引の傾向が強くなっていることを明らかにした。[テーマ3(余剰資源を活用するためのメカニズムの構築)] 余剰資源を再配分するために、多様な環境で機能し得るオークション・メカニズムを分析した。余剰資源を活用するためには、イノベーション創出が重要である。そこで、1)企業の垂直的組織統合のR&D投資への影響の分析、2)イノベーション創出に重要な新規規格競争の寡占モデルにおける分析、3)マーケットでの評判を考慮したベンチャー企業の新規技術開発投資期間の分析、などを行った。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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