研究課題/領域番号 |
15H05730
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
山岸 俊男 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 特任教授 (80158089)
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研究分担者 |
坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782)
清成 透子 青山学院大学, 社会情報学部, 准教授 (60555176)
高橋 伸幸 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (80333582)
阿久津 聡 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 教授 (90313436)
高岸 治人 玉川大学, 脳科学研究所, 助教 (90709370)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | 利他行動 / 信頼 / 経済ゲーム実験 / 脳構造 / 脳活動 / 集団間攻撃 / 社会的ニッチ構築 / 社会制度 |
研究実績の概要 |
平成28年度には、行動・心理・脳構造・遺伝子多型データセットの解析を進め、ゲーム行動と脳構造の関連性に関する実験を行った。その結果、以下の知見を含む複数の知見を論文化した。知見1:従来、囚人のジレンマゲームにおけるステイクの大きさ(金額)は協力行動に効果を持たないとされてきたが、本研究で参加者内要因として操作した場合には大きな効果が認められた。一方で独裁者ゲームでは効果はみられなかった。この結果は感情的意思決定と選好に応じた計算による意思決定の比重が経済ゲームの種類で変化することを示す世界初の知見であり、人々は協力的に振る舞うコストが小さければ比較的気軽に協力するが、相手と相互依存関係にある場合にはコストの上昇に伴って非協力に転じることを示唆する。知見2:これまで、社会的価値志向性尺度によって測定される選好としての向社会性は加齢に伴って高まることが知られている。本研究プロジェクトでも一般人参加者を対象に検討したところ、選好に加えて、複数の経済ゲーム実験における行動レベルでも同様の年齢効果が認められた。さらに、選好を統制しても向社会的行動・協力行動に対する年齢効果が残ることを明らかにした。加齢により、自分に有利な不公平をあえて忌避する方が賢いという信念や、他者を利用することが社会的成功につながる賢い戦略だとは考えない傾向によって媒介されていることも併せて示された。制度設計の際に年齢効果についても考慮する必要があることが示唆された。 また、本年度は海外の研究者と共同で信頼ゲームを17カ国で実施した。 本研究の最終目的につながる文化形成実験は、プレテストを繰り返し実施し、適切な実験デザインの作成と、社会的ニッチ構築理論の精緻化を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画全体はおおむね予定通り進行したが、H28年度途中に参加者リクルートシステム構築知識を有するポスドク研究員が年度途中に海外に転出したため、北海道大学において一般人参加者を対象に実施を予定していた文化形成実験のためのリクルートシステム設計構築への協力が得られなくなった。そのため、当初の予定ではH29年度前半から北海道大学社会科学実験研究センターにて一般人参加者を対象とした実験を開始する予定であったが、H28年度後半に新たな研究員の確保、および、リクルートシステム設計の準備にあてる時間が必要となり、リクルートシステム構築という点については若干の遅れが生じることになったが、研究プロジェクト全体の進捗としてはおおむね予定通りであった。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度後半にリクルートシステム設計の準備と同時に実験の詳細なデザインの作成を行い、H29年度前半で北海道大学にてリクルートシステム構築準備作業中に、学生を対象とした大規模なプレテストを開始することになったため、29年度以降は大幅な実験計画の変更の必要性はない。
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