研究課題/領域番号 |
15H05735
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所 |
研究代表者 |
納富 雅也 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, ナノフォトニクスセンタ, 上席特別研究員 (50393799)
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研究分担者 |
横尾 篤 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, ナノフォトニクスセンタ, 主任研究員 (00393801)
舘野 功太 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, ナノフォトニクスセンタ, 主任研究員 (20393796)
滝口 雅人 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, ナノフォトニクスセンタ, 研究員 (90728205)
小野 真証 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, ナノフォトニクスセンタ, 研究員 (80728197)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 / ナノワイヤ / プラズモニクス / グラフェン / ナノレーザ |
研究実績の概要 |
・波長よりもはるかに細い100nm程度の直径のInAsP/InPナノワイヤと、Siフォトニック結晶のハイブリッド共振器を用いたナノレーザ発振動作に関して詳細なデータを取得し、パルス発振に関してACS Photonics誌に、連続発振動作および10Gbpsの高速変調動作に関して、APL Photonics誌に発表した。この成果は、光通信波長帯における初めてナノワイヤレーザの発振動作であり、さらにナノワイヤとして初めての高速変調動作である。ナノワイヤレーザが情報処理応用に可能性を持つことを初めて示した結果として、NTTおよび米国物理学会が同時に2017年4月3日にプレスリリースを行い、新聞、雑誌に報道、紹介された。レーザに関しては、その後、金属薄膜上に配置した直径が少し太いマイクロワイヤを用いて、室温連続発振を達成した。 ・ナノワイヤとフォトニック結晶のハイブリッド系に関しては、紫外域で発光し巨大な励起子効果を持つZnOのナノワイヤを用いる研究を開始した。この波長帯で動作させるためSiNフォトニック結晶をベースにした設計を進め、ZnOナノワイヤを用いてハイブリッド共振器が実現できることを数値解析により明らかにし、論文発表を行った。同時に試料の作製も開始し、紫外~可視式においてZnOナノワイヤによる共振器形成を実験により確認した。 ・本プロジェクトにおいてハイブリッド系を実現するもう一つの柱であるMIM型プラズモニック導波路に関しては、50nm以下の金属極細スリットによるMIM導波路をSi導波路に高効率に結合するプラットフォームを確立し、同種のモード変換器としてはこれまでで最も大きなサイズ変換比による結合を達成し、同成果をOpticaに発表した。その後、このMIM導波路上にグラフェンを装荷して高効率に光をグラフェンに結合させることに成功し、低い光強度による光非線形応答を観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、本プロジェクトの一つ目の柱であるフォトニック結晶とナノワイヤのハイブリッドシステムに関して、ナノワイヤレーザ発振の成果を論文発表し、報道発表を行うことができた。成果は国内外の複数の新聞、雑誌、ウェブメディアで紹介され、多くの問い合わせを受けた。本成果は、光通信波長帯におけるナノワイヤとして初めてのレーザ発振動作であり、さらにナノワイヤレーザとして初めての高速変調動作である。従来ナノワイヤレーザは色々な観点から研究されてきたが、本成果はナノワイヤレーザが情報処理応用に可能性を持つことを初めて示した点で重要だと考えている。 また、もう一つの柱であるプラズモニックMIM導波路を用いたハイブリッドシステムに関しては、基本構造と位置付けているサブ波長MIM導波路とSi導波路の結合系の実現をOpticaに論文発表を行い、さらに同構造へのグラフェンの装荷に成功し、グラフェンの光非線形性の増強を見るところまで進んだ。まだプレリミナリな成果ではあるが超高速な応答も見えており、計画以上の進展が見られている。 いずれの二つのプラットフォームに関しても、他のナノ材料系への展開が着実に進んでおり、新しい材料系としてZnOナノワイヤ・SiNフォトニック結晶において成果が出てきている。また、新しい試みとして、GSTやVO2などの相転移材料をフォトニック結晶上に装荷し、相転移に伴う屈折率変化によって共振器を形成、消去するという現象を理論解析及び数値シミュレーションで発見しており、来年度以降新しい展開につながる可能性が見えてきている。 以上の状況から、本研究課題の進捗状況としては、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
・複数のナノマテリアル・ナノフォトニクス融合システムが実現しつつあるので、来年度以降は各システムにおいてどのように光物質相互作用が増強されうるのかを実験により実証していく予定である。 ・ナノマテリアルおよびナノフォトニクス系の両方に関して、新しい材料系を扱うようになるので、各材料の屈折率や特性に合わせて設計を最適化して、ナノ材料中に強く光が閉じ込められる工夫する必要が出てくると思われる。そこで、各材料の特徴(例えばグラフェンにおける高速非線形やZnOにおける強い励起子効果など)が最大限に発揮されるような構成、測定法を考案していく。 ・また、ナノワイヤそのものに機能性を付加する研究を来年度より本格的に進め、PIN接合を内包させたり、ナノワイヤそのものに構造を作りこむ手法を研究していき、そのようなナノワイヤとナノフォトニクス構造を組み合わせることを狙っていく。
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備考 |
上記のURLは、本科研費研究成果をNTTから報道発表したときのプレスリリース資料である。
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