研究課題/領域番号 |
15H05738
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
金銅 誠之 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (50186847)
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研究分担者 |
島田 伊知朗 広島大学, 理学研究科, 教授 (10235616)
江口 徹 立教大学, 理学研究科, 特任教授 (20151970)
小木曽 啓示 大阪大学, 理学研究科, 教授 (40224133)
伊山 修 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (70347532)
馬 昭平 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 准教授 (80633255)
菅野 浩明 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (90211870)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | K3曲面 / エンリケス曲面 / モジュライ / ムーンシャイン / 自己同型 / モジュラー形式 |
研究実績の概要 |
複素代数曲面の自己双有理自己同型群がいつ有限となるかは知られているが,正標数の場合は未解決である.有限自己同型群を持つエンリケス曲面の分類は標数2の場合がもっとも興味がもたれている.代表者は有限自己同型群を持つ複素エンリケス曲面が標数2の場合には存在しうるかどうかを決定した。また標数2特有なエンリケス曲面の具体的な構成に成功した.島田は,いくつかの特異K3曲面およびあるエンリケス曲面の自己同型群の有限生成系を記述し,標数が7919以下の体上定義された超特異K3曲面はネロン・セヴェリ格子への作用の固有多項式が既約なSalem多項式となる自己同型を持つ事を証明した.ここ数年、string理論に関連した新しいタイプのmoonshine 現象が見いだされた.その一つにUmbral moonshineがあるがその幾何学的な意味はよく分かっていない.江口はN=4リュービル理論のdualityを用いてUmbral moonshineの幾何学的意味を論じた.小木曽は,正のエントロピーをもつ原始的正則自己同型を有する複素4次元かつ滑らかな有理多様体, カラビ・ヤウ多様体, 射影的超ケーラー多様体, アーベル多様体の存在を初めて示した.馬は重さが3で割り切れるモジュラー形式の環とモジュラー曲面の対数的標準環の間に同型を構成し,テータ零因子と特性ヘーグナー因子の一致を証明した.菅野は,2次元共形場理論の共形ブロックと超対称ゲージ理論のインスタントン分配関数(ネクラソフ関数)の対応(AGT 対応)の背後にある代数的構造や可積分構造に関する理解を目指して、特に3次元 N=2 超対称ゲージ理論や5次元 N=1超対称ゲージ理論の分配関数の因子化や(代数的)ベーテ仮説法の応用などを研究した.伊山は,三角圏TのVerdier商が,Tの内部に実現されるための十分条件を与え,Cohen-Macaulay表現におけるBuchweitzの定理,射影幾何学におけるOrlovの定理、団理論におけるAmiot-Guo-Kellerの定理が得られることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者は,これまで研究があまり進んでいなかった標数 2 のエンリケス曲面の具体的な構成を桂利行との共同研究で与えた.この結果は論文 A 1-dimensional family of Enriques surfaces in characteristic 2 covered by the supersingular K3 surface with Artin invariant 1 として Pure and Applied Mathematics Quarterly (E. Looijenga 氏の 69 歳記念号) への掲載が決定している.さらに有限自己同型群を持つ Enriques 曲面の分類に向けた第一歩を得ることができた点も評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
エンリケス曲面で標数2の場合に固有に現れる場合の研究を中心に進める.Dolgachev, Liedtke, Schroeer, Schutt, Shepherd-Barron, van der Geer 等専門家との研究連絡を取りながら進める.また保型形式に関しては Borcherds 積の専門家 Gritsenko, Salvatti-Manni 等と研究連絡をとりながら進める.今年度はドイツで開かれる研究集会でこれら専門家と研究連絡を行う.K3曲面とムーンシャイン予想に関しては11月に名古屋で主催する研究集会に専門家を招聘し研究連絡を行いながら進めていく.
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