研究課題
前年度は以下の研究を行った。1)ウラン強磁性超伝導体と同じ結晶構造のPnma空間群を持つ新規物質開発を行い、スピンのフラストレーションに起因した多段のメタ磁性を示す物質を見出した。また、強磁性超伝導については純良単結晶を育成によりフェルミ面の再構築もしくはリフシッツ転移に伴う不安定性と考えられる結果を得た。2)UBe13、UGe2、UCoAlのNMRを行い、UBe13では5テスラの磁場下でTc以下T*までナイトシフトは全く変化しないが、T*以下ででナイトシフトは0.02%減少することを見出した。一方UGe2では圧力下角度回転NMRによりイジング的な磁気異ゆらぎを確認した。また、UCoAlでは量子臨界終点についてこれまでの報告と異な結果を得て、量子臨界終点はさらに高圧側に存在する可能性を示した。3)スピン三重項超伝導体と考えられているSr2RuO4のスピン磁化率をRu、17Oサイトのナイトシフトの測定より再度測定した。17Oのナイトシフトは以前の結果を再現した。99Ruのナイトシフトでは、超伝導転移に伴いスピン磁化率がわずかに増大する振る舞いを見出した。99Ruサイトは電子スピンとの結合が強いため超伝導転移に伴うわずかなスピン磁化率の増大を捕らえることが出来たと考えられる。4)UPt3におけるスピン三重項超伝導相のトポロジカルな性質を調べた。非共型な結晶構造に特有の秩序変数を示し、新奇なワイル超伝導相であることを明らかにした。5)第一原理計算に基づいて、UPt3の遍歴有効模型を構築し、その磁気揺らぎの構造を調べるとともに、可能な超伝導状態を明らかにした。また、その計算過程で必要となった群論的な考察を一般化し、様々な多軌道超伝導体に対する群論的な考察をテーブルにまとめることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題ではウラン系超伝導体の純良単結晶を用いた網羅的NMR研究を計画した。現在までに、それぞれの班でウラン系物質を振り分けて、NMR実験を開始している。特に強磁性超伝導体については純良単結晶を用いて異方性を考慮したNMRを行い、UGe2、URhGe、UCoGeの3物質についてイジング異方性をもつ強磁性ゆらぎが存在することを明らかにした。今後これら三物質においてこのイジング強磁性ゆらぎと超伝導の関係を調べ共通点、相違点を明らかにする。またウラン系化合物の物質探索や、様々な超伝導体による超伝導状態のスピン磁化率の振る舞いも系統的に調べる。さらに理論グループも連携し、実験も視野に入れた理論研究を行っている。このような現状であり、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
次年度以降は以下の研究を計画している。1)ウラン系を中心に新規化合物を含めた物質開発、および純良単結晶育成を継続して行う。2)超伝導状態の磁化率の振る舞いを様々な超伝導体で調べる。特に磁化率の大きな超伝導体のHc2でFFLO等などの新奇超伝導状態が実現していないか調べる。3)強磁性超伝導体については継続して研究を行い、今後は特に圧力下での測定を行っていく。4)UBe13の100mK以下までの極低温NMRを行い、前年度に得られた結果についての検証を行い、1テスラ、3テスラ、5テスラ、7テスラでのNMR実験より超伝導相図を確定し、パリティに関する情報を得る。5)UPt3については実験を開始し、強磁場での信号探索ならびに温度変化の測定をおこない、磁気揺らぎと超伝導に関する相関について調べるとともに、1.5テスラ、a軸およびc軸でのNMR実験を開始する。6)UCoAlおよびUGe2については高圧下でのNMR実験を実施し、磁気異方性に関する実験を行う。その他、f2系の化合物について相補的に実験を行う。7)UPt3における超伝導秩序変数を同定することを目的とする。非共型な結晶構造を考慮して秩序変数を構成し、ギャップ構造とその温度変化を計算する。その結果を基に比熱や核磁気緩和率の計算を行い、実験結果と比較する。UPt3の計算結果、および、群論的分類学の結果をまとめつつ、他のウラン系超伝導体UBe13やUPd2Al3などについても同様の解析を行なう。8)電子相関を系統的に取り込めるように計算コードを改善し、重い電子状態の形成と非BCS超伝導体の出現の相関関係について研究する。これらウラン系超伝導体のナイトシフトを第一原理計算に基づいて明らかにする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (27件) (うち国際共著 10件、 査読あり 19件、 謝辞記載あり 23件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (80件) (うち国際学会 7件、 招待講演 3件)
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